コラム20: 空気を読ませる上司の本質的な無能
「空気を読んで仕事をしろ」という言葉は、日本の職場でしばしば耳にするが、この発言自体がその上司の本質的な無能を示している。明確な指示を出さず、部下に「空気を読む」ことを求めるのは、上司自身が伝えるべき情報を放棄している証拠であり、マネジメント力やコミュニケーション能力の欠如をさらけ出している。
上司が空気を読ませる理由は何か。それは、「自分が何を求めているのか」を言語化する力がないからである。本来、労働環境における指揮系統は、具体的かつ明確な指示を通じて成果を上げることが基本だ。にもかかわらず、上司が「空気を読め」という抽象的な要求をするのは、自分の考えを整理できない、あるいは伝える努力を怠っているためである。これは部下に余計な負担を強いるばかりでなく、結果的に職場全体の効率を低下させる。
さらに問題なのは、「空気を読めなかった」部下を叱責する行為だ。このような態度は、そもそも職場でのルールや期待値が曖昧であるという自分自身の失策を、部下に転嫁していることに他ならない。その場その場で適当に流れる空気に対応するのではなく、明確な目標とルールを設定してこそ、職場全体が一丸となって効率よく動けるようになる。しかし、「空気を読め」と言い放つ上司は、その責務を怠り、部下に責任を押し付けているだけである。
空気に頼る職場の弊害
「空気を読む」ことを要求する文化が強い職場では、以下のような弊害が生まれる。
1. 明文化されないルールが生む不公平
部下は、上司が言わなくても自分で察して行動することを求められる。その結果、能力が高くても「空気を読む能力が低い」と見なされた者が不当に評価を下げられたり、逆に空気を読む能力だけで仕事ができていない者が評価されることがある。このような職場環境では、正当な評価を受けるために必要な行動基準が曖昧になるため、部下はストレスを抱え、優秀な人材ほど離職に追い込まれる可能性が高まる。
2. 自由な意見交換の阻害
「空気を読む」ことが優先される職場では、社員は自身の意見を表明することをためらう。特に、空気を壊すことを恐れ、改善のための提案や異議申し立てが行われなくなる。その結果、職場は停滞し、問題点の解決が遅れる。
3. 不健全な人間関係の温床
空気を読む文化が強調されると、陰湿な人間関係が生まれることも多い。上司の顔色をうかがい、同僚同士が競争することで、協力や支援の文化が希薄になる。このような職場は、大抵陰口やゴシップが職場の娯楽の一貫となっている。さらに悪い例では、上司がその音頭を取って楽しんでいるのである。
空気を読ませるのは愚策である
「空気を読む」ことに依存するマネジメントは、職場を停滞させる愚策である。上司に求められるのは、部下が迷わず行動できるよう、期待する業務内容や目標を明確に伝えることである。上司の指導力とは、部下に無駄な負担を強いることではなく、働きやすい環境を提供することだ。「空気を読め」と言う上司は、まず自身の無能さを直視し、言葉で伝える努力を始めるべきである。
最後に、「空気を読む」ことを美徳とする文化そのものを見直す必要がある。本来、職場とは論理と効率を重んじるべき場所である。部下に空気を読ませることで生じる問題は、単なる上司の能力不足にとどまらず、職場全体の健全性を損ねる深刻なリスクを孕んでいる。