本のこと
感想
太陽が昇らない極夜を旅するノンフィクション。
十分に準備したにも関わらずトラブルに見舞われ、その度に落ち込んだり、絶望したり、自分や犬に当たったりする著者のストレートな文章に引っ張られて、あっという間に読んでしまった。
「冒険はシステムの外側に出る行為」という著者の言葉が印象的だった。
日々暮らしていると、様々な商品・サービスの恩恵を受けて生活を送れていることを忘れてしまう。
当たり前のように享受している。
しかし、昔はそうではなかったはずだ。
人間は自然とつながって、森や土を大切にし、敬い、畏怖を持って接していたはず。
それがいつからか、自然と切り離されてしまっている。
私は山へよく行くが、「人間は地球の一部なんだ」と感じることがある。
誰もいない山の中にいると、自然の中に溶け込んで一部になっていくような感覚がある。
私が行くような山は整備されたところばかりだが、それでもなぜだか安心するのは、やっぱり人が自然とつながって生きてきたからだと思う。
この『極夜行』には、自然の美しさ、恐ろしさが詰まっている。
自分にはこれほどの旅はできない。
でも、これくらい人生を賭けた何かに挑戦したい、という気持ちに駆られるような一冊だった。