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主観の企画と客観の企画

商品企画の仕事をしていると、自分のアイデアを聞いて欲しいという人が出てきます。
生活の悩みから出てきているので顧客の直接の声と言えば真摯に向き合う内容なのですが、心の狭い私は少しイラッとします。
そんなに狭い要望にいちいち応えるほど簡単なものではない、そんな気持ちから来るイラつきから始まったものでしたが、いつの間にか苛立ちの理由が変わっていました。
それが主観からくる商品企画に対するイラつきです。

商品企画には主観的なものと客観的なものがあります。
n=1マーケティングは主観的、統計に基づくデータマーケティングは客観的などというつもりはありません。
客観的に整理されたn=1マーケティングもあれば、主観的に解釈されたデータマーケティングもあります。
では商品企画における主観と客観とはなんでしょう。

軽い掃除機と、ペットボトル1本分と同じ500gの掃除機。
客観性があるのはどちらでしょう。
高温で素早く焼くホットプレートと、300℃の溶岩プレートで表面を焼き固めるホットプレート。
客観性があるのはどちらでしょう。

主観的な商品企画には形容表現が溢れています。
軽い、優しい、甘い、安全な…
キャッチコピーとしては頻繁に見かけますが、企画として商品を語る際には受け手による認識のばらつきが大きすぎて企画表現としての意味がありません。
一方で客観的な商品企画は数字で表現できます。
競合より重量を100g抑えた、認知科学に基づいた左から右に順に押していくだけで使える操作パネル、転倒後10秒間でお湯が50mL以上流出しない電気ケトル…
形容表現が設計要件に落とし込まれており、誤解なく伝わりますし、同時に競合との比較もできます。

また、主観的な商品企画が語られる時、主語は私になります。
私はこう思う、私はこうだった、私の場合は…
客観的になるほど主語は市場•顧客、競合に変わります。
私ではなく私達や我が社はと主語が大きくなります。

主語が私で始まり、形容表現に溢れ、裏付けのない4Pに落とし込まれ、思うで締められる商品企画提案。
どうでしょう、穏やかに聞き届けることができるでしょうか。
商品企画を志している人も、商品企画をしている人も、その考えが主観的なものになっていないかを考えてみましょう。
チェックポイントは主語と形容表現だけなのですから。

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