SEOライターをやめたかった
会社員で自社のライターをしていたころ、会社の商品を売るために記事を書いていた。商品名や関連キーワードで検索してくれたお客さんに見つけてもらえるように、商品を買ってもらえるように、適切にキーワードを散りばめてひたすら書く。いわゆるSEO記事というやつだ。
「この商品を買ってくれるお客さんは、こんな悩みを持っていそうだな」「このキーワードなら上位表示を狙えるかも」と考えて書いた記事が実際に上位表示され、たくさんの人に読んでもらえるのはうれしかった。
がんばって書いた甲斐があったし、実際に商品を買ってくれたお客さんもたくさんいた。こんな自分でも誰かの役に立てている気がして、すこしだけ自信が持てた。
でも、上位表示される記事が書けるようになると、上司から「次はこのキーワードで上位表示を狙って書いてくれ」と、キーワードやタイトルを指示されることが増えた。指示された中には商品を否定するようなキーワードや一見無関係なタイトルが含まれることも。
要するに、商品の悪評や別の情報を知りたいお客さんにも、商品の良さを届けるのが狙いだ。
たとえば、「○○(商品名)使えない」で検索したユーザーに、「○○は使えない?使える?実際に調べてみました!」といったタイトルで、結局最後は「○○は使えないという意見もあるけど、良い商品です!」とまとめた記事を届けるのだ。これは架空の雑な例だけど。
これってどうなんだろう?
確かに似たような記事は世の中にあふれている。でも、結局は「○○ 使えない」で検索した読者のニーズには答えられていない気がする。言ってしまえば釣り記事だ。
わたしはお客さんにちゃんと納得して商品を買ってほしかった。タイトルで釣って煽るような内容も書きたくなかった。でも、「書きたくない」と言える勇気もなかった。
違和感ともやもやが次第に大きくなるのを感じながらも、書き続けるしかない自分が情けなくなる日々。そんなある日、張りつめていた糸がプツン切れる出来事があった。
わたしが編集を担当したメルマガのタイトルが勝手に書き換えられ、別の釣りタイトルをつけられてお客さんに配信されたのだ。あまり細かく書くと特定されそうなので詳細は書かないけれど、明らかにインパクトだけを重視した内容にはそぐわないタイトルだった。
悲しくて、悔しかった。自分が今までやってきたことはなんだったんだろう。顔が見えない相手だからこそ、誤解や間違いがないように丁寧に発信し続けていたつもりだった。でも、なんかもういいやって思ってしまった。
このままでは完全に心を病むと確信し、わたしは会社を辞めた。
検索結果のためだけじゃない、お客さんを集めるためだけでもない。もっと読者の気持ちに寄り添った、読んだ人があたたかい気持ちになれるような文章を書けるようになりたい。文章力を磨くためにライティングを学ぶスクールにも入った。
しかし、ライティングをあらためて学んでみてわかったのは、SEOでもセールスでもエッセイでもインタビューでも、本質は大きく変わらないということ。一番大切なのは読者のことを徹底的に考え、質の高い記事を書くことなのだ。
読んでくれた人がどんな気持ちになってほしいのか、どんな行動を起こしてほしいのか、一番伝えたいことは何なのか、しっかりゴールを見据えて丁寧に記事を書く。それがライターの仕事であり、SEOの本質でもあった。
そっか、そうだよね。決してSEO記事が悪いわけじゃない。SEO記事は、誰でも書ける低品質な記事でも、読者をだます記事でもない。
検索で上位表示させるという目的はあるけれど、読者の悩みを解決する有益な記事であることが大前提なのだ。
忘れかけていた大切なことに気づけたから、わたしはもう一度SEO記事にチャレンジすることにした。読んでくれる人があたたかい気持ちになれるSEO記事があってもいいはずだ。
まずは自分のブログから。読者の役に立つコンテンツを考えて、キーワードを選んで記事を書く。「こんな悩みを持っている人にはこの内容はどうかな?」「このキーワードで検索する人には、これを教えてあげたら喜んでくれそう!」と想像しながら書くのは、とても楽しくてワクワクする。
狙ったキーワードでちゃんと検索結果に反映されたときは、心の中で小さくガッツポーズを決める。SEO記事を書くのが楽しいと思えるのは久しぶりだった。忘れていたなぁ、この感覚。
いろいろ迷ったり、悩んだり、逃げだしたりしたけれど、わたしはもう一度SEOライターをやってみるよ。小手先のテクニックで量産された低品質な記事や釣り記事じゃない。読んでくれた人がすこしだけハッピーになれるような記事を書きたい。
あのとき会社からは逃げたけど、書くことを手放さなくて良かったと思えるようにがんばるね。
SEOをがんばりたいので、まずは自分でブログをつくりました。仕事のこと、勉強していること、生活のことなど、いろんなキーワードや内容を考えながら楽しく書いています。よかったらこちらもよろしくお願いします。
”「好き」を大切に”をコンセプトにしたWebメディア『my prism』も運営中。
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