短期と長期で育成を捉える
2つのメタファから捉える
中原(2014)によれば,人材育成は2つのメタファで捉えらられるとしています.それは,「手術」と「漢方」です.
なるほどたしかに,この2つの視点から育成を考えてみると,単に研修を企画するのではなく,どんな人材が必要であるのか,組織の状態に合う研修を考えていくきっかけとなりそうです.
短期で育成すべき人材や,その状況とは?
早速,学校現場という組織で置き換えてみましょう.学校において短期で育成すべき人材・・・
まず,短期とはどのくらいのスパンになるかをイメージします.
例えば3か月.「3か月後に〇〇という行事があるから,それを企画運営できるようになってほしい」という場合が考えられます.この場合,例えば体育主任などがイメージできるかもしれません.
例えば,小学校では,4月に初めて体育主任になり,5月には運動会,7月には水泳,9月にはマラソン大会といった行事や学習活動が組まれています.体育主任として,全校のスケジュールを踏まえ,子供の安全にも配慮しながら活動を遂行していくための計画力が求められます.
この場合,多くの主任は,ある程度教職を経験し,学校の1年間の流れがわかっている人が,前任から引き継ぐ形での育成が考えられるでしょう.
例えば1年.「1年間である程度の技量をつけて,教員の基礎基本を一通り理解する必要がある」という場合が考えられます.この場合は,初任者研修が筆頭となるでしょう.
私が所属している自治体では,初任者研修は2週間に1回程度あり,定期的な学習として学校現場での基礎的な業務内容を学びます.1週間のうち,多くの場合は1日もしくは2日,初任者担当の方が来てくれて,授業の様子をマンツーマンでみてくれます.
秋を過ぎると,年に1回公開授業をして,初任者同士で協議会を行います.
このように,短期集中での育成を行う場合は,属人的で直接的な研修が起こったり,こまめに継続した連続性のある研修が考えられそうです.
長期で育成すべき人材や,その状況とは?
このような研修で育成すべき人材像の中に「中核能力」「優秀」「維持」といった言葉が入っています.これは,学校組織の中でも,リーダシップを発揮したり,学校全体に影響を与えられる職務であったりする人材をねらうことと考えられます.
例えば,研究主任.研究主任は,1年で成果を出すことはなかなか困難な業務です.学校の実態を捉えてテーマを設定し,様々な授業や,様々な協議会を経て,学校全体の研究を推進していく必要があります.研究主任を育成する研修,さて,みなさんどのようにやっていますか?
私が所属する自治体では,年に2回,対面で新任の研究主任が集まって研修をします.その際には,2年目の研究主任が1年目の時代についての苦労話を語ったり,あるあるとして起こりそうな時,それをどう乗り越えたのかといったエピソードを話してもらいます.
2回連続的に行うので,1回目に課題設定をし,2回目までにその達成内容を話し合うといった計画もあります.
他にも,もう少し広い視点で,「ミドルリーダー」の育成が考えられます.中堅教員です.だいたい6年目以降から15年目前くらいの幅になるでしょうか.
自治体によっては,30代でも教務主任,もしくは教頭にならざるを得ない状況があると聞きます.
大学卒業後すぐに教員になって22歳.35歳で教務主任になるとしたら,教職経験は,13年です.これは,短いでしょうか?適当でしょうか?長いでしょうか?
人により様々かもしれませんが,おそらく,まだまだ短い捉える人が多いのが現状だと考えます.
しかし,年齢層が高めに移行していくことは,現状をみれば火を見るより明らかです.今後の投資をかけていく先も,自ずと選定されてくると考えれられます.
短期と長期のバランスを見直す
こうやって書き出してみると,校内研修として行われているのは,おそらく手術的な研修が多いと考えられます.喫緊の教育課題にコストをかけるのは,必然とも言えるかもしれません.
じゃあ長期的な研修はどこで行われているのかというと・・・多くは教員研修センターがその役割を担っていそうです.例えば,自分でスケジュールを立てさせ,年に何回かの研修が受けられるようにし,自分で将来のビジョンを決めて学び進められるようにしている研修が考えられます.
しかし,実際それで,どのくらいの育成が図られているのか?これに対する具体的な数値は乏しいかもしれません.
つまり長期的なコストをかけても,そのフォローアップについての課題がありそうです.
さて,どういったバランスで研修を計画していくのか?
これ自体も研修の課題になりそうです.