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「研修」で促される学びの可能性?

先回の記事では,人材育成を大きく分けると,「Off-JT(いわゆる研修)」「OJT」「自己啓発」の3つがあり,それぞれのやり方に特徴があるということを確認しました. 中原(2014)によれば,2000年代以降は,「どちらかというと『経験重視(OJT)』の方に,振り子が揺れている状況」と述べられています. 同著で取り上げているのは,MORRISON and BRANTNER(1992)が言及している次の内容です. なんと,研修では10%しか学べていない(!?)という・・・

    • Off-JTとOJT.そして自己啓発

      「研修」の定義.つまりOff-JT 教員研修って,どういったジャンルの,どういった内容の,どういった規模の,どういった時間帯に行うものなんでしょうか. 校内研修であれば,多くの場合は放課後にあたるでしょうか.長期休業中であれば,日中に行われることもあるかもしれません.公開授業の後に,みんなで集まって実施することもあれば,ミニ研修として短時間で職員室で実施することもあるかもしれません. 中原(2014)によれば,「研修」とは次のように定義されています. この定義に基づ

      • 短期と長期で育成を捉える

        2つのメタファから捉える 中原(2014)によれば,人材育成は2つのメタファで捉えらられるとしています.それは,「手術」と「漢方」です. なるほどたしかに,この2つの視点から育成を考えてみると,単に研修を企画するのではなく,どんな人材が必要であるのか,組織の状態に合う研修を考えていくきっかけとなりそうです. 短期で育成すべき人材や,その状況とは? 早速,学校現場という組織で置き換えてみましょう.学校において短期で育成すべき人材・・・ まず,短期とはどのくらいのスパン

        • 学校での人材育成って

          「人材育成」について分解すると 本記事でベーステキストとしている,中原(2014)の定義は,人材育成について次のように述べられています. 目的は2つ. 1つは「戦略を達成すること」2つは「組織・事業を存続させること」 そのための取組として, 「従業員のスキル,能力を獲得させる」ことが必要であり, 人材育成とは, スキル,能力を獲得させるための学習を促進すること と読み取ることができます. 「学校組織」に置き換えると では,この定義を,学校組織として具体的に置き換えて

        「研修」で促される学びの可能性?

          ID×職場学習

          そもそも,職場で学ぶって? 私は,教員が自分の教育課題や,学校現場特有の状況を踏まえて学び進めていけるように,ID理論を取り入れた教員研修を開発したいと考えています. IDと教員研修の記事は,#30になりました.理論を実践に繋げていくイメージが少しずつもてて来たような気がします. このままIDの諸理論をもとに記事を続けていくこともできるのですが,ここで少し立ち止まって,「そもそも,大人が職場で学ぶってなんなのか?」を考えていきたいと思います. ベーステキストは,中原淳先

          ID×職場学習

          【IDと教員研修30】学ぶこと・教えることを分解する

          先回は,完全習得学習について考えました.完全に習得することというより,完全に習得すべき内容とな何なのかを考えることの重要性について考える機会となりました. ブルームはなぜ分類学を? 先回の記事で,ブルームといえば!ということで,学習目標の分類学について触れました.本稿では,この分類学について掘り下げて考えていきたいと思います. 1970年代初頭に公開された考え方ですが,この結果に至るまでには10年以上の年月が費やされています. なぜ,分類学としてこのような理論を,長い

          【IDと教員研修30】学ぶこと・教えることを分解する

          【IDと教員研修28】完全に習得すべき「基礎」とは何か

          学習することを分解していくと見えてきたこと 前回は,認知的徒弟制について考えました.しっかり教えるということ,できりるようになるまで教えるということは,教員研修の観点からは,若手・中堅・ベテランというステージからだけではなく,ベテラン管理職が新任管理職に教えていく,といった内容も考えられるのではないかなと思いました. さて,今回は,「教える」「学ぶ」ということについて「完全習得学習」という理論から考えてみましょう. この理論はB・S・ブルームらが1960年代後半にモデ

          【IDと教員研修28】完全に習得すべき「基礎」とは何か

          【IDと教員研修28】「熟達者は何をどう伝えるか」

          「徒弟」というイメージ 弟子が師匠に従う,というイメージが「徒弟」にはあります.ですから,話私自身は「徒弟制」と聞くと,先生がギルドの師匠になって,一子相伝のように技術を伝達するのかな,ということを考えてしまいました.ベストキッドみたいな(古). しかし,「認知的」とあるので,様相は異なるようです. 学習に「徒弟制」を取り入れるよさ,について考えていきたいと思います. 認知的徒弟制の考え方 ジョン・S・ブラウンが提唱したこの考え方は,熟達者がそのスキルや知識を効果的

          【IDと教員研修28】「熟達者は何をどう伝えるか」

          造形的な活動と経験

          ちょっと短めのエピソードです. ある学級に参観した時の出来事です. 低学年の図画工作科で「はさみのあーと」という題材があります. 白い紙を思うままにはさみで切って,そこから見える形から発想し,表したいものを考える内容です. 気ままに切る行為を大切にする この題材のポイントは,「観念的に切らない」ことです. 切り取った形から見立て,想像し,アート作品にしていくことがねらいです. 車の形に切り取ろう,ハートの形に切り取ろうといった,形を優先するのではなく,気ままに切った形か

          造形的な活動と経験

          「深い学び」をやわらかくとらえる

          先日ある学習会で,「深い学び」を実現する授業づくりについてお話させていただく機会があったので,こちらに少しまとめます. 手段という位置付けだけれど誤解も多い? 現行の指導要領のキーワードの一つに「主体的・対話的で深い学び」があります. アクティブ・ラーニングというワードが登場し,子供達が活発に学ぶイメージが広がり,その後,単なる活動を指すというわけではないことが伝わるように,そしてより具体的なイメージが伝わるようにと言葉や内容が吟味され,「主体的・対話的で深い学び」とな

          「深い学び」をやわらかくとらえる

          わかる授業 と 学ぶ授業

          先日,公開授業に参加しました.算数の授業です. その協議会で,「わかる」と「学ぶ」の違いについて話題になりました. 「わかる」は,物事を理解するということ. 今回の授業の中であれば,算数の課題の解決の方法や解答がわかるということ. 「学ぶ」は,課題を解決しようとするプロセスの中で,できることやできないこと,わかっていることやわかっていないことを明らかにして,考えていくこと. 例えば,上のような捉え方をしたとします. すると,「わかる授業」は,一定のゴールが決まっていて

          わかる授業 と 学ぶ授業

          【IDと教員研修27】能動的なグループ学習 Team-based Learning

          「試しにグループで」という違和感 「試しにグループで話し合ってみましょう」という指示を聞くと,少しだけ違和感を感じることが出てきました. グループで何を試すんだろう なぜグループで話し合うんだろう 話し合いましょうではなくて,「話し合ってみる」って,どのくらいの内容だろう ・・・といったことです.授業中こんなことを考えている人がいたら,嫌ですね苦笑 とはいえ,「グループで話し合うとなんだかうまくいく」というイメージは,授業でも研修でもよくあるようです. 沈黙が起こらな

          【IDと教員研修27】能動的なグループ学習 Team-based Learning

          【IDと教員研修26】内容と思考方略を学習する Problem-based Learning

          30記事になりました.継続していきます. 「問題」とは 学校教育の中で,「問題」として思い浮かべるイメージにはどんなことがあるでしょう. 生徒指導上の諸問題 学級で起こる問題 算数・数学の計算問題 社会的事象がもつ社会問題 ネガティブな要素とポジティブな要素で分けられるような,単純さや複雑さで分けられるような,様々なイメージがありそうです. 「問題」と一括りにしても,その解決を通してどのような力を育成するのかを見据えて「問題」の内容を考えていくことが必要です. Pr

          【IDと教員研修26】内容と思考方略を学習する Problem-based Learning

          【IDと教員研修25】「自発的な選択/回避」態度の指導方略

          前回の記事では,運動技能に関する指導方略について考えました.あたま,からだときて,今回は,こころに関する学習目標,態度について考えてみましょう. 「〇〇しようとする」ということ 「物を大切に使おうとする」 「自分の体を大切にしようとする」 「学習に粘り強く取り組もうとする」 態度は,このような表現で表されることがあります. 学習指導要領においては,「主体的に学習に取り組む態度」という評価項目として,粘り強さや自己調整をしている様子を評価することがあります. 態度は,一

          【IDと教員研修25】「自発的な選択/回避」態度の指導方略

          【IDと教員研修24】「ステップをはっきりさせて教える」運動技能の指導方略

          前回の記事では,学び方を学ぶといった認知的方略の指導方略について考えました.今回は,からだに関する学習目標「運動技能」の指導方略について教員研修をイメージしながら考えていきましょう. 筋肉を使って体をコントロールする技能 筋肉と聞くと,パワーが湧き出てくるようなイメージになるかもしれませんが,それだけではありません. 例えば,「鉛筆でまっすぐな線を引く」は,運動技能です.腕と掌の筋肉をコントロールすることによってまっすぐな線を引けるようになります. GIGAスクール構

          【IDと教員研修24】「ステップをはっきりさせて教える」運動技能の指導方略

          【IDと教員研修23】「学び方を学ぶ」認知的方略の指導方略

          前回の記事では,あたまで考える学習目標のうち,「知的技能」について考えました.今回の記事では,「認知的方略」について,教員研修をベースにして考えていきましょう. 効率的な学習を進めるための方略 コンテンツとコンピテンシーという言葉があります. コンテンツは個別具体的な学習内容,コンピテンシーは,他の場面で生かせる技能や思考力のような資質・能力をさします. 学習を行う,ということの多くは,コンテンツを習得することをイメージするかもしれませんが,認知的方略で習得する際は,コ

          【IDと教員研修23】「学び方を学ぶ」認知的方略の指導方略