【IDと教員研修23】「学び方を学ぶ」認知的方略の指導方略
前回の記事では,あたまで考える学習目標のうち,「知的技能」について考えました.今回の記事では,「認知的方略」について,教員研修をベースにして考えていきましょう.
効率的な学習を進めるための方略
コンテンツとコンピテンシーという言葉があります.
コンテンツは個別具体的な学習内容,コンピテンシーは,他の場面で生かせる技能や思考力のような資質・能力をさします.
学習を行う,ということの多くは,コンテンツを習得することをイメージするかもしれませんが,認知的方略で習得する際は,コンピテンシーを習得するイメージが適するかもしれません.
例えば,「効率的に〇〇を進めるための力」です.
教員の業務で考えると…
指導案を書き進める力
週の予定をつくる力
行事の計画案を策定する力
お便りをつくる力
机の上の整理整頓を進める力 etc.
などがありそうです.どれもこれも,「こんな力,あったらいいなぁ」と思ってしまいますね.
前提事項と情報提示をする
認知的方略を指導する時には,前提事項を想起させた後,進出方略の用い方を例示するという方法があります.
例えば,指導案を書き進める力を高めていくのであれば,まずは基礎的基本的な指導案の書き方をおさえます.例えばこんな内容が考えられます.
構想シートやメモを書く.
指導要領での重要語句や展開を押さえる.
教科書を基に教材分析を行う.
学級の児童生徒の実態を踏まえた上で指導の手立てを立てる.
学習評価計画を立てる.
指導案の項目に沿って文章化する.
細かな点は省略していますが,大体このような項目が立つかと思います.このような基礎的基本的な書き方を確認したのち,これらを効果的にする方略を示します.
例えば,「1.構想シートやメモを書く」時の方略にはどんな内容があるでしょうか.
まずは目指す姿から考える
目指す姿が決まったら,単元の最初の姿を考える
最初と最後の姿が決まったら,途中の学習活動を構想する
活動を進めるために,子供はどんな力をいつ発揮するのかを想定する・・・
ただだらだらと書くのではなく,どこから書けば効率的になるのかを考え,かつ,整合性を担保できるようにします.
このような,基礎的基本的な内容の効率化を考えられるようにしていくが,認知的方略の指導法略です.
他の場面での活用例や,方略の自発的採用・無意識的な採用への長期的な練習
学習者が,効率的な〇〇の仕方を習得したら,それらが他の場面でどのように活用されるのかを確認します.
例えば,指導案の書き方であれば,自分が専門とする教科ではない場合や,教科等横断的な学習を構想する時の場合,指定研究を受けた時の形式の場合,紙幅が指定された中での場合,などが考えられます.
認知的方略は,コンピテンシーとして,繰り返し活用していくことで強化されます.裏を返せば,一度覚えただけでは活用できるようになりません.
最初は,「この場面で使う」という指定をすることが考えられます.活用したら振り返って成果と課題を確認できるようにすることも有効です.
活用に慣れてきたら,次第に自発的に活用する場面(自発的採用)から,無意識的でも活用する場面(無意識的な採用)までを意識して練習を重ねていけるようにします.
指導案の場合は,年間に何本も書くことはなかなかないかもしれませんが,校内で他人の指導案を「読む」ことはあるかもしれません.このような時も,書き方に関する認知的方略を活用することができそうです.どのように書いたのかを,例えば後輩と一緒に検討したり,校内研修で取り上げてみたりすることでより高いスキルアップが期待できます.
また,このような方略は,使えば使うほど,「自分らしさ」のようなものが出てくると考えられます.まさに「守破離」ですね.
次回は,からだに関する学習目標,「運動技能」について考えていきましょう.