トラワレ
最初から別れは見えていた。長く続いてくなんてお互い思ってないその場凌ぎの関係。
架空の名前で架空の設定でお互いの現実は探り合わないはずだった。
痛みを伴わないはずの疑似恋愛遊戯。
言葉を巧みに操って心地好くなるだけ。
そこに真実は求めていないと思ってた。
優しい言葉を交わす度に解されていく心がいつしか現実を求めるようになっていくのだが
現実の世界で生身の人間に恋する事は恐ろしくて一歩も踏み出せない私がいた。
会いに来て欲しいと待ち合わせの場所だけ告げる彼に
どうしても会いに行く事は出来なくて
現実の自分を受容してくれなかったらどうしようと悩むだけで
二人は会うことがないままに、時は流れて彼からの連絡は途絶えてしまった。
勇気を出して会いに行けばよかった?
今でも時々考えてしまうけど‥
あれから何年経ったのかな?って忘れる位時間が過ぎてしまったけど
彼と出逢った春が来る度に想い出してしまうのは最後に彼が告げた言葉に私が縛られているのかもしれない。
もう連絡しないでって言った後に大好きだったその声で…
愛してるって告げられたから…
その時からずっと彼の愛の囁きが耳から離れなくて…
他の誰かを好きになるのが恐ろしいのだ。
囚われてしまうのが怖いのだ。
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