シェア
安らかな笑みを浮かべて眠るあの人は、 春の野原に一人でタンポポの隣りに立つて、 決して散ら…
丘のうへの鐘が遠鳴りする真昼間の静寂、 その音が躓いたあなたの膝の疵口に届きますやうに。 …
雪の結晶を拡大すればあんなに奇麗だなんて、 教えてくれてゐたならば、きつと私は良い子でし…
あの頃奇麗だつた踊り子の衣裳も、 もうすつかり青ざめてしまつて、 月の凪い夜だけならとこつ…
時間はなぜか、停まらないけど 君のことだけは、忘れたくないから ずっと端から、気づいてたん…
いくつかの灰色の雲がありました それは風景のやうに流れ 時間のやうに留まるのです とつくに…
忘れるなんてできるかよ 君を思い出にしたくない 夏を目の前に散った 僕の知らぬ間に逝った 君に見せるために書いてた 詩や言の葉の数々も 今となっちゃ行く宛てのない 塵屑のようだ 雲に見え隠れする月が僕の影を揺らした 消えないように街灯を探して 真昼間を装っていた どうかすべてを洗う砂時計よ いまだけ全部停まれ 零れ落ちた君の砂粒を できれば戻してくれよ 文字さえ書けりゃいいんだろ 報われなくてもいいんだろ 僕を変えてくれたのは君なんだ もう全部終わりだ このまま
今日を生きていくうえで大切なことがあった もうどうでもいいんだ 桜の花びらは散った 悲しむ…
よく雨が降つてゐる。 うす暗い午前の、暖かい室内はどこか異世界のやうな雰囲気で、 そ…
うつら目覚めたら、まだ眠い 時計は日曜午前七時 迷わず目蓋が抱きしめあつて また本日も朝は…
命はいつか失はれる。そんなことは知り尽くしてゐたはずなのに、心はいつまで経つても霽れな…
降りはじめた雪の一抹が 君の長い睫毛にかかれば 解けて流れてやがては 君の涙となるだらう …
朝日に目が覚め僕は気づいた まうひとりになつてしまつた 涙のやうな軒先の垂水は 凍つて時が止まつてゐた 吐く息さへも真白く上り けれどもあの雲には及ばず あとに残るはどこまでも澄みきつた 蒼いあをい空だけ 君が笑へば春が咲き 君が歓べば夏の風 君の優しさに秋が色付いた 君をなくしていま思ふ ふたり歩き続けてゐたことに まう一回、雪よ降り積もれ 僕の悲しみのごとく深く