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「僕の庭の境界は地平線」 デレク・ジャーマン展

デレク・ジャーマンのコテージと、彼がその死の間際まで手を入れ続けたという「庭」をひと目みるため、イギリス南東部、海辺の地ダンジネスに行ったのは、2019年の12月のこと。

事前に「何も無いところだ」とは聞いていたけれど、そこは本当に荒涼としたところだった。遠くに原子力発電所が見える以外は、延々と続く海岸線と、まばらな民家、そして灯台。海からの寒風がびゅうびゅうと吹き付ける。横に広がり続ける風景の中に、海岸線を背にして、黒い小さなコテージ「プロスぺクト・コテージ」は、ぽつねんと佇んでいた。

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近寄ってみると、塀も垣根も無い家の周囲に、流木や石、鉄線などの漂着物などを組み合わせて作られた「庭」がある。

冬場なので植物はあまり生い茂っていなかったけれど、漂着物の配置や植物の組み合わせに細かく気を配られた、完成度の高い空間であることがわかる。暖かい季節になって花が咲けば、また全く違った様相を見せるのだろう。

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童心に返って、という言葉が思わず浮かぶ。子どものように、海岸からこれらの漂着物を拾ってきては、少しずつ家の周囲に置いて、ひとつの世界を形作って行ったのだろう。自由と寂しさと、奇妙な開放感に満ちたこの庭のスタイルは、唯一無二だ。

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デレク・ジャーマンは、ティルダ・スウィントンと一緒にビーチで撮影しているときに「セール」の看板が付いた漁師小屋を見つけ、32,000ポンドで買収したという。 1986年12月22日にHIVと診断されたジャーマンは、ここに移り住み、庭を作ることを決めたという。それは死と向き合いながらも心静かに暮らすための、孤独と静寂と創造に満ちた暮らしだったろう。

この、デレクジャーマンの庭とコテージに関する展覧会 ”My Garden's Boundaries are the Horizon"が、現在ロンドンのGarden Museumで開催中だ。

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会場では、コテージの内部を再現した室内をしつらえ(ダンジネスの現地ではコテージ内に入ることはできないので、これは嬉しい企画)、そこに彼の絵画やオブジェ、書簡などを展示している。また、映画 ”The Garden"の一部を上映する部屋もある。

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彼が何を思いながらこのコテージで最期の日々を過ごしたのか、読み解く手がかりになりそうでいて、やはり最終的なところは窺い知れない。それでも、彼が残した作品や庭を見ていると、彼の精神を満たしていた光や影のかたちに触れられるような気がしてくるのだ。

デレク・ジャーマン展の展覧会ページ(開催中:2020年9月20日まで 会場:Garden Museum)

※撮影/月夜と猫(イギリスの美術館では基本的に作品撮影が許可されています/ 無断転載はお断りします)

🎵読んでいただいてありがとうございました。よろしければまた次回もどうぞ。


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