
『フーガはユーガ』
後輩におすすめされて読みました。ゆっくり楽しんで読みたかったのに、続きが気になりすぎてほぼ一気読みしてしまった。
親から虐待を受ける双子、風我と優我。
ただの双子じゃない。彼らには秘密のアレがある。
アレとは、「誕生日の日だけ、二時間おきに入れ替わる」こと。
助けて!
そう祈る自分がいた。たぶん頭にあったのは、テレビで観るスーパーヒーローの姿だ。最初は普通の人の姿だけれど、自分や誰かがピンチになったときにポーズを決め、「変身」とく口にする。その途端、一瞬にして姿が、その、正義の味方の恰好に変わる。そして敵をばっさばっさと倒してくれるのだ。
実際はそんなことは起きない。
子供の時、こう思っていた双子。いつだって絶対的な悪に立ち向かっていった。
虐待だけじゃない。DV、いじめ、もっともっと暗くて普通だったら考えられないようなこと。
残酷で理不尽なこと。
この双子には現実に、日常にある。
助けてくれる人はいない。
救われない。
報われない。
真っ暗な現実。
でもなぜか読んでて気持ちもブラックにならない。どこか明るさというか、暗くなりすぎない不思議さがあった。
それはこの双子が、現実に染まらず、人に対する優しがあったからなのかな。文中では暇潰しとあったけれど。
二人いたら、悲しみも苦しさも、半分こできるわけではない。でも、支えあえる、「苦しみを共有できる」人がいるって大きい。
この本で最も印象的なのが「閑話休題」という言葉。何度も何度も登場する。
閑話休題、という言葉を思い出す。
余談の後に、「それはさておき」と本筋に戻るときに使われる接続詞だ。小玉たちも僕たちも、この恵まれているとは言い難い人生に、突如、「閑話休題」が現れ、本当の、もっとマシな日々が現れてくれないものだろうか。そう願ってしまう。
弱いものが犠牲になるこの本、読んでいるときいつもこう願っていた。
この本の見どころは何といっても“伏線の多さ”これに尽きる。
「あれが伏線だったのかー!!」とまさかの伏線がとにかく多い。ラストは怒涛の伏線回収。興奮しっぱなし。
一回読むだけでは絶対に回収しきれない。絶対に読み返すべき。
この作品を読んでいるときの感情をうまく言い表せないことが一番やるせない気持ちになる。
残酷で苦しくて辛くて、でも暗くなりすぎなくて、最後の疾走感は気持ちいい、
不思議というで片づけてしまうのが非常にもったいないが、不思議な感情になる作品でした。
とても面白かった!!
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