『じゃむパンの日』(読書日記)
この数日、冷えとPMSによる体調不良でなかなか小説を書くエネルギーが湧いてこなかった。
読書でもしようかと、積読している小説を開いてもなかなかその世界に入り込めず、集中できない。
そこで私は、日記帳のような装丁に一目惚れして買った赤染晶子さんのエッセイ『じゃむパンの日』(palm books)を読みはじめた。
タイトルから、食べ物が出てくる日常ほっこり系エッセイかと思って読んだら全然違ってびっくりした。
いや、たしかに日常は日常なんだけど、ものすごく自由で、混沌としている。
表題作『じゃむパンの日』は、とあるビルで働くわたしが、インド人や看護師などに次々間違われ困惑し、心の中で「私は新妻です!」と言い、給湯室で新妻ごっこをはじめる…という内容だ。
(うまくまとめられなくてすみません笑)
どこまでが本当で、どこから妄想!?という内容で、エッセイってこんなに自由でいいんだな〜!と冒頭から赤染さん独特の世界観に惹きつけられた。
「小説とは、エッセイとはこうあるべき」みたいな枠から解放され、私も55篇のエッセイをなんとなく気になるタイトルのものから読んだり、自由に読書を楽しむことができた。
なかなか魅力を言語化できなくて歯がゆいが、赤染さんの文章のテンポは読んでいてとても心地良い。そして、日常を切り取る感性がユニークで、ユーモアに溢れている。
また、全篇を通して生まれ育った京都への思いが滲み出ていて、どこか昭和感のある内容にノスタルジーを感じた。
何気ない日常を、想像と言葉の力でこんなに個性ある魅力的なエッセイに昇華した赤染さん。
2017年に42歳で亡くなられたことがとても残念ですが、次は、赤染さんの芥川賞受賞作『乙女の密告』を読んでみようと思います。
くすっと笑えてほっこりあたたかい気持ちになる不思議で素敵なエッセイでした。