愛を知った日
一緒に毛布にくるまりながら映画を見た。
君は途中で寝てしまったけど。
そんなきみの寝顔を見ていたら、なぜだか妙に安心したのを覚えている。
なんだか、もうずっと前からこれが日常だったみたいに。そうして2人で過ごすことが当たり前みたいに思えたのだ。
いま思い返すと、あれがすべての始まりだった。
あの時の光景を思い出そうとすると、いつだって、まるで世界が突如として煌めきを放ったように、あの場面がキラキラと輝いているのだ。
それはまさしく新たな世界の始まり。
その世界は、すべてが鮮やかに彩られていた。
そんなふうに人を好きになったことはなかった。
あの人が、これまであった辛いことや苦しいこと、そして時には生きてることを諦めかけるような出来事も、なんとか必死に乗り越えて、生きて私の前に現れてくれたことがただただ嬉しかった。
あの人が笑顔でいてくれて、楽しそうで、嬉しそうで、それがまるで自分のことのように嬉しかった。
誰かが生きててくれて、その事実が嬉しくて号泣する日がくるなんて思ってもみなかった。
自分の頭がおかしくなってしまったのかと不安になった。実際、あの時からずっとおかしくなっているのかもしれないけれど。
「好き」ではなかった。あれは「愛」だった。
初めて愛というものの存在を実感した。
「愛」なんていう目に見えない何とも不確かなものが、あのときの私のなかには確実に存在した。
きみと一緒にいられたのは、たった4カ月半。
あの4カ月半を、私は一生忘れないだろう。
初めて「愛」を知った、あのときを。
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