最適解
正解が見つからないというのは、まるで髪を切ることのようだ。セミロングの髪をショートボブにした。肩のあたりで毛先の痛んだぱさぱさの髪がうねっているのがいやだったから。ショートボブになった。お風呂上りに髪を乾かすことを怠るととんでもないことになる。これなら結べる長さがあったほうがよかったかな。雨が二日続き、後悔が渦を巻く。部屋に干した洗濯物もなかなか乾かない。浴室乾燥で干せる量は限られているのにと思うと、一人暮らしをしている人たち全員「がんばっている」と称えたくなる。
異動にともない、住む場所も変わった。人間関係も再構築だ。最初は様子見で…なんて思っていていいのもいつまでだろう。「サバサバしていますね」と職場で二人に言われた。それがいいのか悪いのかはわからないが、今は自分の態度を取り繕うまでの余裕がない。きっとマルチタスクが苦手なのに、マルチタスクを強いられていることに心臓が痛む。基盤が固まれば、イレギュラーにも柔軟に対応できるのだろうが、現時点での基盤は足を取られる泥沼状態である。「ここはこうして欲しい」と投げかけられる要望は私のとった行動に対しての改善提案に過ぎない。が、これも余裕がなくなると「否定」と捉えてしまいそうになる。認知の歪みのメカニズムが分かっているだけよかった。
まだここに来て二週間も経っていないから。引っ越しをたった二日で終わらせ、あらゆる手続きも引っ越し後の公休でなんとか済ませた。泥沼の基盤の上で毎日を過ごしているだけでもきっとすごいことなのだ。まだどこまでを職場でさらけ出して良いのか、どの人がどんな性格なのかを窺っている最中だから、ひとりで抱え込む量が多いのだろう。
今日は起きてすぐに身支度をし、歩いて行ける距離に見つけたカフェに行った。ここのところ「何がしたい」のかはっきりわからなかった。予定がない、予定を立てる予定もない。聞きたい音楽も読みたい本も見たい映像もわからない。けれど、カフェには行きたかった。そのカフェにはつい一昨日も行ったばかりだ。木を基調にした店内はとても落ち着く。一昨日と同じ席に座った。トーストとカフェオレを頼んだ。カリカリの表面なのにふわふわなトーストに頬がゆるんだ。カフェオレは苦かった。砂糖を一本入れた。まだ苦かった。苦いままでよかった。
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