20「詩」真っ白な鳩
空に浮かんでいる雲が数羽の真っ白な鳩になった
何十年前だったろう
あれはベルギーの修道院だった
隅々まで掃除のゆきとどいた庭のあちこちに
たくさんの真っ白な鳩がいた
羽のどこかを切られているのだろうか
放し飼いされているのに
飛び立っていくこともなく餌をついばんでいた
空を見上げて1日を過ごしているのだろう
自分が鳥だということにも気がつかず
飛んでいる鳥を見ている
鳥はいいな
空が飛べて
白い鳩は空を見上げていつも思っている
季節は春だった
白い鳩の周りに白いスイセンが束になってたくさん咲いていたのを覚えている
空に浮かんだ数羽の真っ白な鳩は
春一番の風に揺れて
陽射しをからだに思い切り吸い込むと
薄く広がって
青空に消えていった