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【和柄解説】文様帖/幾何編「格子‐こうし‐」

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【文様の特徴】

格子こうし」は幾何きか構成模様のひとつで、平行するたてよこの線が直角で交差するように構成される文様です。「格子縞こうしじま」ともいい、縞文様の一種にも数えられます。斜めに交わるものは「斜格子ななめごうし」や「たすき」「菱繋ひしつなぎ」とよばれています。

【名前の由来】

格子こうし」とは本来、窓や出入り口に取り付ける建具の一種のことです。細長い木を間を透かして縦横に組んだもので、その様子に似ていることからこの名がつきました。

しま」と名のつくものでも格子文様こうしもんようの場合も多くあります。本帖では複数名ある文様は見た目に応じて分類、掲載しています。

また、格子文様こうしもんよう自体は古くからありますが、本帖の時代区分は名称がつけられた時代をもとに登録しています。

【文様の種類】

「格子」は有職文様ゆうそくもんよう能装束のうしょうぞく、貴族や庶民のきものや帯地まで幅広く用いられ、様々な名がつけられました。

―基本の格子文様

シンプルな縦横比の同じ格子を碁盤格子ごばんごうし、3本を1組にした格子を三筋格子みすじごうし、大きな太い格子の中に小さな細い格子を交差させたものを翁格子おきなごうし、太い格子に細い格子が平行したものを童子格子どうじごうしや「子持格子こもちごうし」といいます。

碁盤縞
三筋格子
翁格子
童子格子

―大きさで名前が変わる格子文様

縦と横が同じ幅のものは弁慶格子べんけいごうしといい、これより大きいものを大格子おおごうし、小さいものは小格子こごうしとよばれています。歌舞伎では太い大柄は威勢の良さを、細かい柄は上品さを表す場合が多くあります。

弁慶格子
大格子
小格子

―品のある細かい格子文様

とても細かい格子は味噌漉格子みそこしごうし微塵格子みじんごうしといいます。

味噌漉格子
微塵格子

―江戸の風流歌舞伎役者文様

その他にも「役者好やくしゃごのみ」や「歌舞伎役者文様かぶきやくしゃもんよう」「役者模様やくしゃもよう」「役者文様やくしゃもんよう」「役者柄やくしゃがら」という歌舞伎役者が愛用し、その名がつけられたものがあります。

菊五郎格子きくごろうごうし団十郎格子だんじゅうろうごうし」「高麗屋格子こうらいやごうし」「六弥太格子ろくやたごうし」「市村格子いちむらごうし」「団七格子だんしちごうし」「三津五郎格子みつごろうごうし」「中村格子なかむらごうし」「播磨屋格子はりまやごうしなどが有名です。

菊五郎格子
団十郎格子
高麗屋格子
六弥太格子
市村格子
団七格子
三津五郎格子
中村格子
播磨屋格子

―その他いろいろな格子文様

また、「市松いちまつ」や「網代あじろ」なども格子の一部に数えられることがありますが、本帖では別項目を設けます。なお、海外文様である「千鳥格子ちどりごうし」は本項目で取り扱います。

千鳥格子

その他にも格天井ごうてんじょう障子格子しょうじごうし意匠化いしょうかしたものなど、多種多様な文様が存在します。

格天井
障子格子

―葛飾北斎が考案した格子文様

最後に、江戸時代後期の浮世絵師である葛飾北斎かつしかほくさいが文政7年(1824)に刊行した『新形小紋帳しんがたこもんちょう』から北斎がオリジナルで考えた万字格子まんじこごうし三重格子みえごうしを紹介します。文様名は、北斎が書き残してあるものはそれをもとに、記載が無いものや現代と言葉遣いが違うものは本帖が新たに命名し直しました。

万字格子
三重格子

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【参考文献】

中島泰之助『別冊 日本の文様③縞・格子』光琳社出版(1978)
永田生慈『北斎の絵手本 三』岩崎美術社(1986)
尚学図書・言語研究所『文様の手帖』小学館(1987)
木村孝『和の意匠にみる文様の名の物語』淡交社(2005)
髙田啓史『伝統の染織工芸意匠集1 小紋文様』グラフィック社(2007)
木村孝『きもの文様図鑑』ハースト婦人画報社(2014)
石崎忠司『和の文様辞典 きもの模様の歴史』講談社(2021)


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