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ミールス【2】 相席のススメ
インド食器屋「アジアハンター」の店主・小林真樹さんが、食器買い付けの旅や国内の専門店巡りで出会った美味しい料理、お店、そしてインドの食文化をご紹介します。
ある時テレビを見ていたら、ピアノのコンクールの映像を流していた。競技者たちは緊張した面持ちでピアノの前に座ると、指を開閉したり手首を軽く回したりしてそれぞれにウオーミングアップしている。その姿をどこかで見たとしばらく考えていた私は、ようやくある光景を思い出した。「ああこれは、ミールスを前にした南インド人だ」。
「箸を使う文化が日本人の器用さを生んだ」という言い方をよく耳にする。しかし生まれながらに日本文化の只中にいる私からすると、箸使いよりもむしろ手指のあらゆる可動域を駆使して食事を完遂してしまうインド人の方がよほど器用に感じる。固形物ならまだいい。問題はラッサムなどの汁物とライスとが混ざり合った、液状比率の高い、いわゆるシャバシャバ状態になった対象物である。つかもうと躍起になっても指先に付着するのはせいぜい数粒の米と汁だけ。それをくり返しているうち、思わず皿に口を近づけて、ヅヅーっと音を立てて吸い込みたくなる衝動にかられる。
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2024年12月13日(金)発売
『深遠なるインド料理の世界』小林真樹/著