「全国最中図鑑」76 修禅寺物語(静岡県伊豆市)
ちょっとコワいお面の形をした最中だ。顔面が縦二つに割れ、目にはポッカリと穴が空き、恐怖に近い悲痛な表情をしている。
この古いお面、実は鎌倉幕府の二代将軍・源頼家の顔を模したもので、本物が修善寺の宝物殿に安置されている。頼家は頼朝と北条政子の嫡男で、18歳という若さで将軍になるが、独裁政治が過ぎるという理由で出家させられ、修善寺に幽閉される。そして修善寺で温泉に浸かっていた時、湯口から大量の漆を流し入れられ、全身がかぶれて病に伏せるようになり、結局死んでしまう。死ぬ前に頼家は、そのかぶれて腫れ上がった顔を母政子に知らせるため、彫り師に頼んで面に刻ませたという。別名「死相の面」。
明治の劇作家・岡本綺堂がこの話をヒントに『修禅寺物語』を書き、これが歌舞伎の演目として人気を集めた。最中「修禅寺物語」は、この物語を題材に、実存する頼家のお面を模ったものだ。
実物そっくりの皮の中には、やや甘みの強いしっかりとした粒あんが詰められ、袋には能面を彫る彫り師の姿が描かれている。形、由来ともになかなか珍しい最中である。
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