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チャパティ【3】 インド各地のチャパティ

インド食器屋「アジアハンター」の店主・小林真樹さんが、食器買い付けの旅や国内の専門店巡りで出会った美味しい料理、お店、そしてインドの食文化をご紹介します。



前項と矛盾するようだが、インドでは外食店において必ずしも常に豪勢なごちそうだけが求められるわけではない。外食店を普段使いするような層からは、ワズワーンのような豪華で非日常的な宴席料理ではなく、むしろ日常食べているものに近いものが求められる。日本でいうところの定食屋のような存在だ。

農村部のような自宅と働き場が近い「職住近接」の環境であれば昼メシ時に家に帰って食べたりも出来ようが、都市部で働く人たちにとってそれは難しい。単身で働く人ならなおさらだ。そういう理由で、インド各地の大衆食堂では日常食たるチャパティもまた置いているのである。おかず類はともかく、チャパティにだけは家庭性を求める客が多いせいか、男のスタッフが大半を占める厨房内にあって「チャパティ焼き場」だけは女性にまかせている店が少なくない。おばちゃんスタッフの慣れた手つきを見て「ああ、この店は大丈夫そうだな」とインド人客は安心するのである。




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2024年12月13日(金)発売
深遠なるインド料理の世界』小林真樹/著