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丸鶏をさばく
私は今、鳥恐怖症を克服しようとしている。
発症の原因は田舎暮らしにある。
物心ついたころから、死んでいる鳥を目にする機会がたびたびあった。
田んぼや畑、柿の木に吊るされたカラス。
親戚の家の台所に置いてある絞めたばかりの軍鶏。
ハレの日に飼ってる鶏を自分達で捌き、食べる文化も残っていた。
かごの中の小鳥。神社や公園にいる鳩。近くで羽ばたかれると恐怖が増す。目やくちばしが凶器に見える。とにかく鳥全般が苦手。知人からは心理カウンセリングを勧められたこともあるくらい。
その一方で、食べ物としては卵も鶏肉もおいしく食べられる。
「それってどうよ」と自分でも思ってきた。
一度だけローストターキーを作ったことがある。カナダの伝統的なクリスマス料理を再現してみたいという好奇心のほうが勝った。
4キロほどの小さめのものを購入。両手でもずっしりと重みを感じながら、ハーブ類と塩水が入ったビニール袋の中に漬け込む。その姿、形、感触の
全てがグロテスクに思え、気が遠くなりかけた。
*
モントリオールで鶏肉は意外と高い。日本とは違い、しっとりするモモ肉よりもパサつく胸肉のほうが高級。脂肪分が少ないので、健康志向の人に人気がある。
先日、行きつけのスーパーで丸鳥がお買い得になっていた。胸肉2枚よりも断然安い。私の近くにいた数人のマダム達は、迷うそぶりもなく手に取っていた。
近年、モノの値段が確実に上がっている。ここ最近のインフレ率は4%を越えた。食料品がじわりじわりと高くなっているところでの丸鳥セール。
買って損はない。それでも、私は怖かった。
商品棚から少し離れたところに立っていると、一番小さそうな丸鶏が
「買っちゃいなよ」
と言ったような気がした。
クリスマスまであと1週間。ローストチキンなんて作りたくない。丸鳥を
触るのも怖い。でも、確かにお買い得だった。
捌いてみる?でも、それって鳥恐怖症の私にできること?
自問自答していると、
「やってみれば?チャンスだよ」
と言われたような気がした。
YouTubeで検索すれば、捌きかた動画が出てくるだろう。これからもカナダで生活していくなら、そのテクニックを身につけたほうが便利。フランス食文化を継承するケベック人達は、普段から丸鳥料理をやっている。そんな彼らの食生活をもっと取り入れてみたくなり、小ぶりの丸鳥をカートに入れレジに並んだ。
好奇心と節約術がタッグを組んだ。
鳥恐怖症は解決する?
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