100:未来
先は遠く、ぼやけている。
今日はメガネを忘れた。知り合いの顔すらわからなかった。
何もつけずに外に出たのは久しぶりだった。
大学の友人も同じゼミの人も彼女もぼやけている。
見えないことがこんなにも幸せだとは思わなかった。
物体の輪郭が曖昧になり、絵の具のパレットのように歪み混ざっている。
いつも使う道だからいいものの、
知らぬ土地ではこのままではくたばってしまいそうだ。
落ち着く。
破滅の予感とともに、落ち着くのだ。
周りの目が気になる人にとっては、一枚絵になった視界に救われるのである。
未来はぼやけて見えないことが多い。
先の見えぬとはよくいうものだ。
だから、人は成長し、救われるのかもしれない。
無限の可能性を秘める、ぼやけた未来に向かって
生きていく。
回復の兆しがみえてきた。