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まんがのはなし~ブルーピリオド~

マンガのコラボPVがいいよってはなしでも紹介しました「ブルーピリオド」を読みました。
めちゃくちゃいいマンガだった。
そんなわけで今日は「ブルーピリオド」の感想や魅力について個人的な視点ではありますがお話したいと思います。お付き合いいただけたら幸いです。

「ブルーピリオド」とは

まず「知らないなぁ」という人のために簡単にですがあらすじと基本情報を。
「ブルーピリオド」とは『月刊アフタヌーン』で連載中のマンガです。作者は山口つばさ先生です。


容姿端麗、成績優秀、何でもそつなくこなせて、友人関係も良好、いわゆるリア充な主人公矢口八虎。
完璧にみえる彼は何でもそつなくこなせるが故に何にもやりがいを見いだせずにいました。
しかし偶然出会った一枚の絵をきっかけとして絵を描く楽しさに目覚めます。絵で自分の想いが伝わるうれしさに気がついた彼は美術の道に進むことに決めます。目指すのは東大よりも倍率が高い日本一の難関校、東京藝術大学。厳しい受験の中で様々な人に出会い、悩み、努力し、葛藤し、技術を上げていく八虎。
彼ははたして合格できるのでしょうか。

という感じのお話です。とてもざっくり書いたので詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。1話は無料で読むことができます。

このMVも見ると大体の雰囲気がつかめると思います。
時間がありましたら是非に。

ジャンル的に言うなれば美術系スポ根マンガという感じ。
こちらの作品2020年マンガ大賞も受賞されています。
基本情報はだいたいこんな感じかなぁ。

それでは具体的に個人的な三つの視点から「ブルーピリオド」の魅力について書いていきたいと思います。

1.誰しもが悩む様なことを描いていて、心に刺さる名言がいっぱい。

芸術や藝大受験というとてもシビアな世界で主人公達は立ちはだかる壁を乗り越えるために努力し、葛藤し、挑み続けます。そんな彼らから出てくる言葉や時には優しく、時には厳しく向き合ってくれる大人達の言葉は重みがあって、私達の心にも深く刺さります。

例えばこんな言葉。

「好きなことは趣味でいい。これは大人の発想だと思いますよ。」

絵を描くことの魅力に気がつき、その道に進んでみたいと本心では思いながらも、周囲からの期待や
安定しない芸術という分野に進むことに迷い、絵は趣味でいいんだと考える八虎。
そんなときに美術部の顧問、佐伯先生がかけた言葉です。
好きな分野に進むのか。好きでは無いけど安定した分野に進むのか。芸術などの分野にかかわらず将来のことを考えるとき誰もが一度は抱えたことがあるのでは悩みではないでしょうか。
この言葉は八虎だけではなく進路に悩む人の背中を押してくれるような言葉だと思います。

お次はこちら。

楽しむってさ
すげーホンキな気持ちじゃん
楽しんで作ってそれ否定されたら
立てなくなりそうで怖いんだよ

芸大1次試験直前、受験へのプレッシャー、焦りの中で絵を描くことの楽しさが分からなくなってしまった八虎から出てきたのがこの言葉。
大好きなことだったり、本気で取り組んでいることを否定されるのは自分を否定された様な気持ちになりますよね。
自分の本当の気持ちが他人に理解されるのがものすごく嬉しい反面、否定されたときの絶望感もまた半端じゃないというか。
自分の本当をぶつけるっていうのは怖い。そんな葛藤がにじみ出ています。
これは生きていると日々のいろんな場面で考えてしまうことなんじゃないかなと思います。

最後はこちら。

自分が「普通」だと思ってることは案外「その人らしさ」だったりするのよ
でも自分にとっての「普通」はみんなにとっても
「普通」だと思っちゃうから一人でソレに気づけないのよ

予備校にて描いた絵をお互いに講評しあう八虎たち。講評し合う中で自分が平凡でだめかなと思っていた部分が他人には違うように映っていることを知った八虎に予備校の講師、大葉先生が言った言葉です。
自分らしさってなかなか分からない。自分らしさに悩むこと、いろんなことができる周りと「平凡」な自分を比べて嫌になってしまうことってあるんですよね。でそういうことって自分一人でしまい込んで悩みがち。
でも大葉先生が言うように他人と話すことで分かることがあったり、友達が「普通」だということが自分には「すごいな」と思えたりすることって結構あるなと思いました。

ごく一部を紹介しましたが他にも名言はたくさんあります。
誰しもが抱えている、でも誰かに話したりできないような悩みが描かれていて、読んでいる自分も勇気をもらうことができます。

2.創作や表現をしようとする際に大事なことを教えてくれる。

マンガのメインテーマは絵画、彫刻などの美術ですが作中に出てくる言葉や考え方は創作や表現全般に言えるんじゃないかなと感じます。創作や表現というとおこがましいかもしれませんが自分も文章を書いてく中で「どうしたらもっと伝わる文章がかけるのか」、「すごい記事を書く人はどこからその感覚を得ているのか」とよく考えるようになりました。そんな中で共感できたり、「なるほど」と思わされるような場面が「ブルーピリオド」にはたくさんあります。

たとえば1巻で美術部の顧問の佐伯先生が言った言葉。

作った本人が好きで楽しんで情熱を込めて作ったものってねそれを見た人も楽しくなっちゃうものなんですよ
逆にどんなに技術があっても情熱のないものは人の心に響かないんですよ

すごく共感できました。自分の経験したこととマンガに出てくることはスケールが違うかもしれませんが、自分が熱量を持って伝えたいことがしっかりある中で書いた記事って読まれるし、かなりスキを押してくださる方(個人的にちゃんと想いが伝わった人数だと思ってます)が多いんです。
人に伝える為の創作における、なにか核心的な部分なのではないかなと思います。

次は八虎が通う予備校の大葉先生の言葉。

“作品”はその作家が出した一つの”答え”
いろんな作品を見ていろんな答えの出し方を知ることで自分の作品や考えにも反映させられる
まずは”自分が何を好きか知ること”
そこから始めましょ
自分を見つめてキャンバスと向き合うのと同じぐらいいろんな刺激に触れるのは大事なことでさ
自分らしくないものに触れてみないと自分の世界が広がらない
それに
自分のいいとこは案外他人が見つけてくれたりするのよねー

めちゃくちゃいい文章を書くひとが文章を書く際に大切にしていることとかぶっていることが多いんですよね。いろんなものを見て、聞いて、触れて、感じること。自分が普段触れないものから刺激を受けて自分の世界を広げること。自分も積極的にやっていきたいなと思います。

こちらも八虎がお世話になる先生の言葉。8巻に出てきます。
(一応ネタバレの可能性があるのでぼやかしますね。)

吟味して 検証して 繰り返して
君が選んだものが君の作品になるの

腕のあるコピーライターさんは締め切りギリギリまでアイデアを考え続け、何度も何度も訂正を繰り返すそうです。文章は書いて、読み返し、消して、書き直す、を繰り返すことでよくなっていくと人気のある作家さんも答えている。文章とも共通する部分があるなと感じます。
「ブルーピリオド」のこの言葉には、名人やプロも実際にやっている何かを作る際の基礎みたいなものが凝縮されているなと思いました。

こんな感じで何かを作ったりするときに大切な事がいっぱい書かれていて、個人的にはすごく響きました。きっと何かしらを生み出す人にとってすごく響くんじゃないかなと思います。
にしても八虎を導く美術関係の先生すごくいい先生が多いんですよ。これも彼の人柄や美術に向き合う姿勢ゆえなのかな。

3.芸術に関する基礎知識がわかりやすく、美術館に行ってみたくなる。

なんだか芸術ってすごく難しくて遠い存在のように思いませんか?
私は「何かを感じなくちゃ」とか「理解できなかったらどうしよう」と考えてしまい、美術館に行ってみたいという気持ちがあっても足を踏み入れることができません。
同じ理由で芸大受験がストーリーの主軸である「ブルーピリオド」も読めるかなと心配していたのですが、心配は無用でした。むしろいろんな基礎知識をわかりやすく描いてくれているので興味がわいてきたほどです。

例えば美術鑑賞に対する姿勢の話。

八虎が美術館で絵の見方に悩んでいると、予備校の同級生は「値段の高い料理(権威ある作品)が口に合うとは限らない」、「産地や製法(絵の背景)を知っておいしく感じることもある」、「テーブルマナーは大事だけど縛られすぎるのも変」と食事に例えながら「芸術は正しいかより、自分がどう感じたかの方が大事やろ」と観賞に対する持論を話します。
そして八虎に「自分が絵を買うならどの絵が買いたいか」という視点で絵をみる「買い付けごっこ」を提案します。

この橋田君という同級生の言葉は私が持っていた「敷居が高そう」という芸術鑑賞のイメージを変えてくれました。理解しようと必死に見る以外にもいろんな見方があっていいんだと知って「美術館いってみたいかも」とまで思いました。

他にも名画に共通する要素の話。

八虎が予備校での面談をしているシーンで先生は言います。「すべての名画はね構図がいいの。」と。
そして大体名画の構図は大まかに「○・△・×・s・▢」に分類でき、これらを組み合わせて描かれているのだと実際の絵を用いながら解説してくれます。

私は芸術ってインスピレーションみたいなものが全てだと思っていたんですが、ある程度の規則みたいなものはあるのだということに驚きました。また絵を見る視点を新しく知ったことで今度絵を見るときは「○・△・×・s・▢」のどれが使われているのかを実際に考えながらみたい!と思いました。

こんな感じでテーマの主軸は芸大受験ですが芸術を知らない人でも親しみをもつきっかけになるような要素も多く面白いです。

というわけで個人的な3つの視点から「ブルーピリオド」の魅力について描いてきましたがいかがだったでしょうか。少しでも「おもしろそうだな」と
思ってもらえたら嬉しいですし、是非マンガを読んでみてほしいです。
自分の感想も入ってしまったために、かなり長くなってしまいましたが最後まで読んでくださりありがとうございました。

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