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【ルーツ旅🌺高知編・再びの秋祭り🍂③】7人の郎党の墓と新たな使命
★これまでのお話
400年前、このZ村に落ち延びた戦国大名は、村娘と結婚して子どもをなしたあと、7人の郎党とともに姿を消しました。
そんな伝承がある中、私は7人の郎党の墓がある神社の存在を知り、連れて行ってもらうことになりました。
K太郎さんは、これから行く神社を「ゆがや神社」と呼んでいました。
「もう60年も前のことじゃけぇ、名前は違うかもしれん」
ちなみに、K太郎さんはメールを使わないので、いつも私が手紙を書き、折り返しの電話をもらうというアナログな方法でコミュニケーションをとっています。
しかしご高齢のため、電話の声が非常に聞き取りづらく、「ゆがや神社」なのか「ゆがわ神社」なのか、漢字でどう書くのかもわかりません。
私は、お祭りの前に神社について調べようと、Z村の若村さんに尋ねましたが、神社の名前も所在地もはっきりしないため、手がかりが得られませんでした。
春日神社の総代さんも知らないと言っていたし、どうもその神社の存在は地元でも知られていないようです。
▼山の中にひっそりとたたずむ神社
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山道の途中に、小さな集落がありました。
「ここに、神社を管理している人が住んでいるはずじゃ」
K太郎さんが外に出て、ある家のインターフォンを鳴らしましたが、留守のようです。もしいれば、話を聞けたのになぁ。
K太郎さんは、さらに数分間車を走らせてから、左カーブに差しかったところで停めました。山道が少し広くなっていて、車一台なら停めても大丈夫そうです。
「ここじゃ」
K太郎さんが、車を降りました。私は、娘にレインコートを着せて外に出ます。
道路を30メートルほど歩いてから、K太郎さんは右手にある小さな階段を上り始めました。
階段といっても、単に山肌を約50センチ幅に削り、段々をつけただけのもの。雨が降っているため、うっかりすると足元がすべりそうです。私は左手に傘をさし、慎重に1段ずつ上っていきました。
階段を上りきったところには、大量の落ち葉と、枯れ枝が積み重なっています。どちらに進めばいいのか迷って、右のほうに目を向けると、5メートルほど先に鳥居がありました。
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むきだしの丸太で作られた古い鳥居の向こう側には、ご神域が広がっています。私は、その静かで厳粛な雰囲気の中で、体が緊張するのを感じました。
鳥居の柱に、神社の名前が書いてあります。
「Y神社」
Yは、この地区の名称です。
ゆがや神社でも、ゆがわ神社でもなかったのか。そりゃ探せないはずだ。
ちなみに今ネットで検索したところ、Y神社の名前では1件もヒットしませんでした。けっこう珍しい名前のようです。
Y神社は、うっそうとした木々の影に隠れるように、ひっそりとたたずんでいました。
▼社殿は長期間手入れがされていない
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鳥居の奥に、社殿がありました。先日の延命寺と同様、とても小さな建物で、小屋といってもいいぐらいです。
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社殿にかかっているお正月の飾り物がすっかり朽ち果てているのをみると、どうやら長期間手入れがされていない様子。
私は社殿に向かって礼をし、手を合わせました。自己紹介と、ようやくここにたどり着いたこと、七人の郎党の墓にお参りしたいことを伝えました。
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▼えっ、これが7人の郎党のお墓??
「7人の郎党のお墓は、どこにあるんですか?」
私が尋ねると、K太郎さんは、
「このへんに埋まっておる」と、社殿の左側を指し示しました。
そこには、こけに覆われた小さな石板が、地面からほんの少しだけ顔をのぞかせていました。
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「えっ、これ??」
私は声をあげました。てっきり、立派な墓石が7つ並んでいるとばかり思っていて、こんな小さな石だとは想像もしていなかったのです。
「当時は、こんな山の中じゃ。ちゃんとした墓石もなかったんじゃろう」
そうなんだ……。
「で、でも、このままじゃそのうち落ち葉に埋もれて、これがお墓だとわからなくなるんじゃないですか?」
私はなぜか、心の中に焦りのようなものを覚えました。
「そうじゃなあ」
K太郎さんは、仕方がないだろうとでも言いたげに、石板の上に落ちていた枯れ枝を拾い、端の方に投げ捨てました。
▼古い墓石が立ち並ぶ
私は、あらためて石板を1つ1つ見て歩き、写真を撮りました。落ち葉に隠れてはっきりしませんが、少なくとも5,6個はあるようです。
7人の郎党は、果たして主人と一緒にどこかへ落ち延びて、それからまたここに戻ってきたのか。それとも最初から主人に従わず、ここにとどまったのか。
それはわかりませんが、この古い墓の様子からみて、はるか昔、数人がここに葬られたことは確かなように思われました。
古い墓というと、以前、私の京都のご先祖が眠る土葬の墓地について書きましたが、この墓地はそれよりもはるかに古そうです。
私がひととおり石板の写真を撮ってから鳥居の外に出ると、そこには通常の墓石が20基ほど立ち並んでいました。おそらく江戸時代のものと思われるものもありますが、苔むしていて墓碑銘は読み取れません。
近くには、明治から昭和、平成の元号が刻まれた墓石もありました。おそらくこの神社を管理している家のお墓でしょう。
▼私に課せられた「新たな使命」
山から下りて、K太郎さんに最寄りの駅に送ってもらう間、私はずっと考えていました。
あれは、私の手に余ると。
何度もこの村に来ているとはいえ、私はあくまでも部外者です。
東京に帰ったら、今日見聞きしたことはいつしか記憶の中に埋もれてしまい、誰にも伝わることはないでしょう。
80代のK太郎さんがそのうち亡くなったら、あの神社の管理者以外、誰もあの場所を知る人はいなくなります。そこに7人の郎党のお墓があることも。
毎年、春日神社のお祭りに筒井氏の子孫が集まってくるとはいえ、参加者の大半は70代以上で、将来、神社やお祭りの維持が難しくなることは目に見えています。
また、村の人口が全国で最少レベルであることを考えると、この先、Z村でこの伝承が子々孫々に伝えられていくことは難しいでしょう。
でも、それでいいんでしょうか??
かつて大和に根を張り、文化と宗教を保護し続けた筒井一族が、確かに存在したこと。
その後、大名家としては滅亡したものの、一族の一部が高知の山の中に落ち延び、生きながらえたこと。
Z村の伝承が事実なのかどうか、学者でもない私にはわかりませんが、伝承が存在することはまぎれもない事実です。
このことは、どうしても伝えなければいけない。世間の人々に、筒井の一族に、少なくともZ村の筒井氏の末裔には、どうしても知ってもらわなければいけない。
この伝承を彼らに引き継ぐのが、私の使命だ。
そう思ったのです。
私は、1年前の出張の際、トントン拍子にこの村にたどり着いたときのことを思い出しました。
私がこの村に引き寄せられたのは、誰かが私に、Y神社の存在と7人の郎党のお墓のことを、世間に伝えてほしかったからじゃないか。
私が興味を抱いた延命寺の鐘や、春日神社から盗まれた巻物の話は、私がまたZ村に来るための仕掛けにすぎなかったんじゃないか。
なんとか筒井氏の子孫にこの伝承を伝え、Y神社に案内しなければならない。
私は強く心に思いました。
東京に帰ったら、そのための方法を考えよう。
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駅に着くと、ちょうどホームに電車が入ってくるところでした。
こうして、私の4度目の高知への旅が終わったのです。
>>>前回の話 ②はこちら
★ちなみに、私が曽祖父に課された1つめの使命についてのお話はこちらです⤵
>>自己紹介はこちら
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★今回の見出し画像は、Angie-BXLさんにお借りしました。ありがとうございます😀
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