
インディフィニト・ノート 18話
<前話までのあらすじ>
全中戦争が始まって細川が最初に出した指示は斑工業の2年が集まっている場所(ゲームセンター)へ特攻隊長の西田と親衛隊長の奥島のコンビで、リストの四人を倒す事だった。斑工業のメンバーがすでに五人倒れていて、
警戒しながら奥へと進むと対象の暁海校の3年生の四人が対戦格闘ゲームに
集中している事が分かり、西田と奥島は宣戦布告をし一番手は奥島VS神崎が始まった。キックボクシング対柔道と思われたバトルは、あっけない決着と
なり、二番手の西田VS山里で探り合いの情報戦が始まった。
1話は<1~5P>こちらから
17話は<81~85>こちらから
18話<86~90P>
西田は向こうに自分のデータが無いと直感で分かったので無駄話をやめることにした。これから戦おうと相手に近付こうとしたタイミングでズボンのポケットに入ってた携帯電話のバイブレーション機能が発動し電話が来た事を知らせる振動が太腿に伝わっていく。
「もしもし、西田だっ」
「あっ細川です。戦闘中だったらスイマセン」
「言われてた荷物は忘れずに持って来てるけど未だ何かあるのか?」
細川は、西田の声色を聞いて未だ戦いが始まっいていない事を察知する。戦闘中に電話で邪魔される事を極端に嫌う事は、校内でも有名な話だった。
じゃあ電話に出なきゃ良いではないかと思うかもしれないが命に関わる緊急な要件かもしれないと律儀な面もあった。
「島谷さんに頼んで西田さんの生徒手帳に、今回の対戦相手の情報を正確に記載させて頂きました。デートでは、万全で楽しんで貰いたいので僕からのささやかなプレゼントです!」
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「言いたい事は分かった」
「では失礼します」
西田は細川の電話が終わると通話を切って胸ポケットから普段、絶対に使わない生徒手帳を取り出した。開いて見ると確かに見慣れない文字で見やすく書かれていた。
五段階評価を現わすレーダーチャートも添えてあり、これは本格的なデータだと分かった。パラパラとめくり、暁海高校のページに辿り着くと山里の所で目を止める。そこに太字で背中を向けた相手には、一切攻撃しないとあったので妙案が浮かんだ。
「山里、靴紐が解けてるから少し待ってろっ」
「てめぇから乗り込んで来といて今更、白ける事言ってんじゃねぁぞ!」
先にリングに上がると火山が噴火しそうな程、顔を赤らめている山里に対して背中を向けながら床にしゃがみ込んで死角を作った。と同時にすばやく靴紐を解いて生徒手帳の内容を読み始める西田。
身長175cmで手足が長く柔術は黒帯の実力者。歩く後ろ姿は度々、女子と間違えられる。
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ボブヘアーがお気に入りで甘い物が好物(特にショートケーキ、シュークリームが大好物)だが太らない体質でもある。兄妹は歳の離れた小学生の妹が一人居るが兄貴のせいで家に男友達を入れる許可が降りていない。
つまりシスコンだ。父親が居なくなった場合は一生彼氏が出来ない可能性も考えられる。釣りが趣味で月に二回、ブラックバスを目的に琵琶湖へ行っている。両親と親戚は医者の家系だが結婚相手が医者なら本人は免除するという不思議なルールが存在する。
お金持ちの家なのでバス釣り用のボートも保有している。釣りもキャッチ・アンド・リリースを専門としているので釣った魚を食べるという目的の釣りには参加しないと決めている。データ分析は得意ではあるが、それは、あくまでも喧嘩(戦闘)においてのみで、それ以外の趣味や家族構成には、一切の興味がない。
打撃で勝つのがダサイさえ思っているらしく対打撃戦にはハイテンションで望むことが多い。
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ここまで読んで趣味とか家族構成が書いてある細川の調査網に恐怖を感じていた西田。細川が味方で良かったと心から思えた。気持ちを切り替えてレーダーチャートの内容を確認する。
技4、体力5、知力4、力(腕力)3、速度4で平均値が高め。力に関しては握力、単純な腕力で大きくデータが分かれる。カッコ表記なのは、正直わかりやすかった。アドバイスの項目には、関節技と絞め技は特に要注意が必要。打撃と見せ掛けて関節で仕留めろと書かれていた。
詳細なデータの入手方法には興味があった。
「靴紐結び終わったら声掛けろよ!」
「分かってる」
山里がフェアプレイの精神で望む事が西田に伝わったので生徒手帳に書かれている事が正確なデータだという事が分かった。歳の離れた妹を人質に獲るという選択肢が無いので姑息な手を使ってまで勝利が欲しい訳ではないという事が伺えた。
恋人が居たとしても同様だろう。おそらく細川なりの美学があるのだろう。
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西田は、山里の最後の行に罰ゲームで禁煙中の文字を目で追いながら先程解いた靴紐を強い意志を込めて固結びをした後に蝶々結びを重ねた。他者から見たら何てことない意味の無いように見えるが気合の入った時にこそ発動させるルーティーンだった。
相手が思い描くマーシャルアーツを思い浮かべて口火を切った。
「山里、待たせたな」
その場で立ち上がり山里へ向きを替えると胸ポケットに手帳を戻してリングに上がる西田。
「おう。こっちは罰ゲームで禁煙中だから大変だったわ」
両手を恋人つなぎにした状態で手をグルグル回す動作を始める山里。格闘技ファンなら、お馴染みの打撃で人気の選手の真似だった。それに対して、ジークンドーの独特なステップを披露する西田。
「ジークンドーはマーシャルアーツなのか?」
お互い手探りの状況ならば打撃VS打撃を予感させる攻防と言えなくもない展開だった。
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