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空想屋の裏庭 ─夏─
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まだわたしが学生だった頃、誰にも秘密の友達がいたの。
オフホワイトのペンキで塗られた、三角屋根の小さな家に住んでる女の子。小さな白い花の咲く茂みを駆け下りて、わたし、しょっちゅうその子の家に遊びに行ったわ。
そこではいつもいい匂いがしていた。ある時は、季節の花の匂いだったり、ある時は、焼き立てのお菓子の匂いだったり。そしてわたしが尋ねると、決まって ”とっておきのお茶“ を丁寧
靄(もや)の晴れるその瞬間
少し陰った空模様の下、ふらふらと、でも少しイキイキと歩く、仕事を終わらせたその帰り道。
上司に怒られたことや、失敗してしまったことを思い出してしまい気持ちが少し疲れたので、お気に入りの小粋なカフェに寄った。
いつもの席に、座り、いつものようにカフェラテを頼む。
注文したものを待つ間、少し暇なので、鞄から書類を出そうとしたが、やめた。気分転換で来たのにそんなことをしたら、私の気分も、なによりせっか