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世界的ホテリエのエイドリアン・ゼッカ氏が惚れた町、瀬戸田の魅力に迫る【前編】

モノクロームの屋根一体型太陽光パネル、Roof-1を設置している施設や住居に訪問し、太陽光発電が支える人々や彼らの営みにクローズアップ。

今回の訪問先第2弾は、瀬戸内海に浮かぶ生口島瀬戸田にある複合施設「SOlL Setoda」。広島県尾道市と、愛媛県今治市を繋ぐ「しまなみ海道」の中心部に位置する、日本一のレモン生産量を誇る生口島にあるのが瀬戸田町。このしまなみ海道は、本州と四国の間の島々を地続きにしたために今は島巡りをするサイクリストの聖地として知られている。

少子高齢化や地方の人口流出が原因で、地方の空き家率が高くなっている昨今、瀬戸田もその例に漏れない過疎化の進む地方都市の一つだったが、アマン・リゾーツを創業した世界的ホテリエのエイドリアン・ゼッカ氏の手がけた旅館「Azumi Setoda」、泊まれる銭湯「yubune」、そして一番カジュアルな「SOIL Setoda」と、次々に新しい宿泊施設がオープンされ、近年幅広い層の人々の注目を浴び始めているだけではなく、移住者も増えているらしい。なぜ、この街に人々は魅せられ、引き寄せられているのか?実際に瀬戸田の地に足を踏み入れ、その魅力を紐解いていきたいと思う。

港を降りてすぐ、瀬戸田の街を少々散策。木枠のガラス戸が美しい木造の建物が、本日の宿泊先のSOIL Setoda。下がレストランなどの店舗で、店舗の上が宿泊施設になっている、ショップハウスという建築ユニットで、現在2棟ある。耕山寺方面へ歩いていくと、しおまち商店街の入口に入る。その街並みは昭和のままタイムスリップしたかのようだ。

Azumi Setoda -日本旅館を造るというアマン創業者の夢の実現

しおまち商店街を入り1分ほど歩くと数寄屋造りの立派な日本家屋が見えてくる。過去にアマン・リゾーツを創業した世界的ホテリエのエイドリアン・ゼッカ氏による国内初の旅館、Azumi Setodaだ。かつて浜旦那と呼ばれ、瀬戸田で製塩業や海運業で栄えた豪商・堀内家の築140年の旧邸宅が、京都を拠点にする数寄屋造りの名工、三浦史朗氏によって改修された。私たちは贅沢にも、旅の始めの朝食をとりにAzumi Setodaへと足を運んだ。本来宿泊者限定だが、今回は特別にご案内していただいた。

館内に入り、立派な骨組みが目を奪う。全国から良質な材料を集めることができた家の主の当時の豪勢ぶりが伺える。四季の移ろいを感じ取れる樹々の植えられた内庭を眺めながらラウンジを通り、奥の個室へと案内された。

瀬戸内海の恵みをふんだんに使用した朝ごはんを、堀内家から継承された器でいただく。まるで堀内家の在りし朝の食卓に招かれたような心地になる経験だった。器もしっかりと鑑賞。古美術の器でいただく朝食、なんて贅沢なんだろう。その伊万里焼や九谷焼をじっくりと眺めていると、塩田が広がりし頃の瀬戸田で、北九州へと塩を運ぶ航路とともに帰還したであろうこの器たちのアナザーストーリーに想いを馳せてしまうのであった。

食事の後は敷地内にある茶室「東屋」へと案内していただいた。ここはゼッカ氏の書斎がもし日本にあったならばというコンセプトを以て造られた場所だという。元の茶室のオリジナルのディテールも精密に復元している箇所と、ゼッカ氏の日本旅館への再解釈が融合した、心に静寂が訪れる場所であった。

Azumi Setodaを後にしようと外に出ると、ばったりと大学時代の旧友に遭遇した。まさに十数年ぶりの再会だった。彼は向かいのyubuneへと取材に来ていたようだった。モノクロームの同僚から「誰かしら知り合いに会う不思議な場所ですよ、瀬戸田は。」と事前に言われた事を思い出し、まるで占い師に未来を言い当てられたようで思わず可笑しくなってしまった。

銭湯宿 -yubune

美術家・ミヤケマイ氏のデザインによる、モザイク壁画

旧友が取材に行った泊まれる銭湯「yubune」は、Azumi Setodaの向かいにある。Azumiやyubuneの宿泊客だけではなく地元の方まで、誰でも日帰りで利用ができる開かれた場だ。美しい壁画を見上げて湯船でリラックスをするもよし、サウナで汗をかくも良し。1日の終わりにおしゃべりをしながら疲れを癒す、瀬戸田の土地に暮らす人々の日常を知ることができるのも楽しみの一つだ。

土地の個性は、”地産地消”によってつくられる - SOIL Setoda

本日の宿泊先であるSOIL Setodaにチェックイン。丸みのあるカーブや、ポップな色が差し色に用いられ、まるで海外のアパートメントの一室のような、フレンドリーな印象のある客室だ。床材や扉は地元産の構造用合板が用いられ、壁には牡蠣殻が含まれた瀬戸田漆喰が施されているなど、地元で生産された素材を取り入れている。デザインは「SANU」や「% ARABICA」の設計を手がけたPuddle Inc.によるもの。

瀬戸田へ注ぐ太陽を”地産地消”する、エネルギーをつくる屋根

この棟の全ての電気は、モノクロームの屋根一体型太陽光パネルRoof-1からの自家発電によりまかなっている。地元に降り注ぐ太陽から電力を自給するという、”エネルギーの地産地消”というわけだ。文字通り屋根と太陽光パネルが一体化しているため、瀬戸田の古き良き美しい街並みに調和し、建物の景観を壊さないのがRoof-1の良いところだ。屋根の外観は以下の写真を参照していただきたい。

ガルバリウムの屋根にしか見えないのがRoof-1
屋根に太陽光パネルが一体化しているので、この屋根自体が発電をする

さらに客室には、モノクロームの最新製品のHEMSであるHome-1(ホームワン)がついている。壁に一体化したタッチパネルから部屋の空調と照明がコントロールできるほか、Roof-1から発電した電力がモニタリングできる。こうやって発電されたエネルギーが視覚化されると、「お、クリーンなエネルギーを使っているな」とより実感することができて気持ちがいい。

壁と一体化したタッチパネルがモノクロームのHEMS、Home-1。

実際に夫にHome-1を使ってもらった。指でスライドしてエアコンの温度の調整や、部屋の照明の明るさ調整ができるのは感覚的だ。未来の入り口に向かう途中にはテスラの蓄電池Powerwallがあり、日没後でも電力を使用できる。

指でスライドして照明の明るさを調整
蓄電池はTeslaのPowerwall

部屋を出て、少し商店街を散策。素敵な藍染の自然布の暖簾に惹かれて中を覗くと、生け花をしていたお母さんが、「寒いから中に入りなさい」と、笑顔で手招きしてくれた。茶屋まんどころの主のお母さんはご親切にお茶を入れてくださり、この土地の歴史を教えてくださった。しかし、どうやら昔はもっと人々で溢れていたらしい。それは、島々を橋で繋ぐしまなみ海道ができ、人の流れを変えてしまったからだと言う。
「ここは耕山寺までお参りするまで、必ず通らないといけない道だったから、橋ができるまでは店が人で溢れかえるほどの観光客が歩いてたんだよ。SOILさんは頑張っているね、勢いがあるけど、どうなっていくか。代表の小林くん、あの子は腰が低くってねえ、とってもいい子だよ」とお母さんは話す。
こういった地元の方々との触れ合いや交流があったのも、瀬戸田の魅力の一つだと感じた瞬間だ。そしてお話を通して改めて驚いたのが、SOILを手がける小林氏が一人一人、地元の方々と向き合ってお話をしている事だった。

”アイドル活動”から始まる、地域に根ざしたソフトなまちづくり

商店街の中には、地元の方から宿泊者まで使えるコワーキングスペース「Soil work」がある。そこで作業をしていた、SOIL Setodaを手がけるしおまち企画代表の小林亮大氏に瀬戸田のまちづくりの背景と街の魅力について伺った。

小林さん:「親会社のStapleの代表の岡は、Azumiを運営するナル・デベロップメンツの共同代表でもあるのですが、Azumi Setodaをオープンするにあたり、高価格帯のホテルのお客様だけではなく、地元民やサイクリストなど、あらゆる層の方々が交流する、瀬戸田という地域全体を盛り上げるような場所にしていきたいとなり、SOIL Setodaやyubuneといった施設も開発することになりました。僕はSOILSetodaの開発責任者として、店舗運営担当の鈴木と2人で瀬戸田に移住しました。」

「東京から来て、”Stapleです、こんな施設作ります”って、地元の方にいきなり企業として自己紹介したところで、誰ですか?となると思いまして、まずは地元の方々に顔を覚えてもらうことを目的に、鈴木と一緒に自分たちをアイドルと自称して活動を始めました。僕の好きなドラマに反町隆史と竹野内豊の演じる”ビーチボーイズ”があるのですが、海に近い町へ東京から男2人が移住して何か始めるというのが、そのイメージにハマったんです、だから、"しおまちブラザース"(笑)。ダサくてカッコ悪いのが、逆に親しみやすさにつながるかなと思いました。通称しおぶらを称し、地元の小学校で講義をしたり、柑橘ジュースを販売したり、会社とは関係なく交流を深めようと思い、様々な活動をしました。」

左:しおぶら兄鈴木さん、右:弟の小林さん

「地元の方々からすると瀬戸田が一番盛り上がっていたのは約50年前。 フェリーで来て耕三寺にお参りに行く参道として栄えたのがしおまち商店街だったんです。地元の方が街を歩いてる人に声をかけているのも、ここが観光地だったという土地柄、外から来る人をもてなすマインドセットが元々備わっているからだと思います。実は瀬戸田を訪れた人から結構な割合で、地元の方に声をかけてもらったよという話をされるのですが、それが、”瀬戸田って人情味のある場所なんだな”と思っていただける要因だったりするのではないかなと思います。」

従来のスーツを着たデベロッパーではなく、Tシャツにビーチサンダルのアイドルと称することで、地元の人々にとってより親しみやすい存在となる。アイドル活動をというと一見ふざけているようだが、それが深いコミュニーケーションを生み出し、地域をより理解することに繋がり、地域に根ざした良い”ソフト”な街づくりを目指すことができる。まんどころのお母さんがそれを証明しているように、Stapleがその地域に元々ある素材を活かすというのは、そこに住まう人々のことも含むのだと感じた。

ちなみにソフトデベロッパーの”ソフト”は、地域のためを思う優しいまちづくりという意味と、ホテルやレストラン、カフェなどのハードだけではなく、また瀬戸田に来る口実となるイベントというソフトを共に開発するというところにも掛かっているようだ。

近日の大きなイベントは来年2月に開催される「せとだレモンマラソン」だ。サイクリングやマラソンなどのアクティビティを楽しむもよし、この島の雰囲気に癒されに旅館や銭湯でゆっくりするもよし。この機会にぜひ瀬戸田を訪れてほしい。

後編へ続く

後編は瀬戸田の美食めぐり、それを支える皆様をご紹介!



モノクロームのRoof-1とHome-1を体験できる、Soil Setoda

〒722-2411広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田254-2
HP:https://soilis.co/locations/setoda/
Instagram:@soil_setoda


モノクロームについて
モノクロームは、創業者の梅田優祐が自宅を建設する際に、理想の住宅用太陽光パネルと、つくられた自然エネルギーを効果的に制御するためのソフトウェア(HEMS)が存在しない問題に直面したことをきっかけに、その問題を解決するため2021年7月に設立された会社です。

HP: https://www.monochrome.so/
Instagram:@monochrome.so
X(Twitter):@monochrome.so

屋根一体型太陽光パネルRoof-1についてもっと知りたい方はこちら
家をシンプルにするHEMS、Home-1についてもっと知りたい方はこちら


Text&Edit:Miko Okamura Ellies
Photo&Video:Christopher Ellies

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