#053. 「フリーアドレス」な職場の悩み.
(1) 会社がフリーアドレスになりまして.
先日、勤務先にいわゆるフリーアドレスが導入されました。
平たく云いますと「オフィス内のどこに座ってもOK」と
云う制度です。しかしながら、今まで「固定座席」を
前提条件として運用されていた制度の根底が変わったことで
悩ましい点も生じているので 紹介させて頂きます。
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(2) 導入背景.
フリーアドレスが導入された背景は、下記です。
(A) 部署によって、出社率が高い部署と、在宅率が高い部署が
2極化していた。在宅率の高い部署のスペースを減らすことで
出社している人のスペースを広くしたい。「密」を改善する。
(B) 親会社が外資系に代わり、フリーアドレス導入が
親会社から降ってきて、一方的に決まった。
(A)が表向きの理由で、(B)がHRや総務部の本音、と解釈しています。
親会社の上層部からの理由なき圧力に 逆らえなかったのが実情です。
ここからは、導入から1か月経ちまして、
既に発生している懸念点を紹介いたします。
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(3) 固定座席にならざるを得ない人も、かなり多い.
私の勤務先は、自動車系の製造業です。 開発中の製品の
チェックを「実機 + PCシミュレーション環境」で行います。
具体的には、
・静電気防止のマット.
・開発中の実機.
・安定化電源.
・ハーネスやケーブル.(たくさん)
・CANのジグ.
・デスクトップPC+テスト用アプリ.
・人によってはオシロスコープ.
・テスト信号を入力するのスイッチジグ.
などの機材を使いながら、ソフト実装、
デバッグ、評価を進めていきます。
これらの機材を 毎朝 出社したら 引っ張り出してきて
帰宅する時にロッカーにしまって帰りましょう……
と云うのは、ナンセンスそのものです。
そもそも出社組の、在宅勤務が難しく出社している背景は、
これらの開発用の機材を用いて業務を進める部分にありまして
フリーアドレスに不向きであることは、
導入前から懸念点として挙げられていました。
予想の通り、機材はEveryday置きっぱなし、事実上
固定席の運用になっています。ポジティブに表現するなら
現場が柔軟に対応している、ネガティブに表現するなら
行き当たりばったりの運用になっている、になっています。
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(4) 顔と名前が一致しないので 会話が減った.
固定席の場合は、ある程度メンテナンスされた座席と
お名前の座席表がありました。 1000人規模の会社ですので
社員同士、顔と名前が一致しないことがザラです。
そのような時、座席表を片手に
「ここの座席に座っているのが、〇〇さんだよね」
というロジックで 話しかけるきっかけを作っていました。
たとえば 源泉徴収票を配布する時ですか、
税金の金額が確定した書類を HR部門から配布するときに
座席表を片手に 配布の旅をしていました。
それが困難になりました。
また、労働組合がありまして、部門ごとに
「職場委員」をお願いしています。
職場委員さんには、
・現場の困りごとを吸い出して連絡してください!
・イジメや ハラスメントを目撃したら教えて!
・体調不良の方がいれば「気になる」くらいのレベルでも
執行委員~組合専従に連絡してね!
といった役割をお願いしているのですけれども
これは、固定席だったから成立していたのだな……と
気づかされる機会になりました。。
労働組合から 紙媒体で配布していた冊子や社内報なども
あるのですけれども、フリーアドレスとなると、正直、
全員に行き渡らせるのが困難になりました。電子化(PDF)し
メール配信によってブロードキャストする運用と
併用しているのですけれども、
さらなる改善が必要と感じています。
また、フリーアドレス化で、誰がどこに座っているか
毎日変わるので、同僚の毎日のちょっと変化に
気が付きにくい職場になりました。
同僚の「あれれ、今日ちょっと顔色悪そう…?」に
気づけるのは、毎日顔を合わせている仲間だったりします。
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(5) 結び.
親会社がフリーアドレス導入を急いだ背景は、
Googleのように
「社員同士の、コミュニケーションを活発にしたい。
オフィスをフリーアドレスにすることで
会話する機会が増える仕組みを作ろう!」
だったと考えられます。
しかし、私の勤務先の場合ですと、そもそも
個々のキャラが内向的な人達が多いこともあり
「結果として コミュニケーション機会の増加に
フリーアドレスは、寄与していない。」
です。
フリーアドレス導入から1ヶ月経過した時点での実績になります。
制度だけ導入しても、結局、運用する人間次第である
分かりやすい例を体験しております。
もちろん 何十年も 固定座席の環境で過ごしてきた人間が
フリーアドレスに変化して まだ1か月ですので
まだまだ これから変化してゆくかもしれません。
しばらくして、変化がありましたら またnote致します。
また、労働組合の「職場委員」の在り方についても
考え直すべきタイミングを感じております。
ここについても他労組の施策などもヒアリングしまして
進展ありませば、noteしたいと思います。
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最後まで お読みいただき ありがとうございます。
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<参考図書>
経営組織論
鈴木竜太