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読書Note[ブルシット・ジョブクソどうでもいい仕事の理論]

[ブルシット・ジョブ
クソどうでもいい仕事の理論]
デヴィッド・グレーバー著
岩波書店 刊

著者は「負債論」で有名な著者の文化人類学者のデヴィッド・グレーバー。

タイトルの、「ブルシットジョブ」とは、無意味なまでに不必要で、有害でもある有償の雇用の形態を指す言葉。

グレーバーは本書で、私たちの社会が、誰も語りたがらない無益な仕事で溢れている可能性について、語っている。

ずっと労働問題の専門家、弁護士や研究者の著作を読んで来て、事象の整理の仕方に違和感を感じるようになった。

あまりに当事者によりすぎた視点だと、その現象の起こる必然性や、社会のダイナミズムが見えてこないのだ。

それで、いろんな分野の人の書いた労働の本を少しずつ読み進めている。

そういう意味で文化人類学者の著者が書いた本書は、大変に刺激的だった。




時間を金銭の対価として売る、という賃労働のなりたちや、労働、働くという概念が、もともと神学に起源を持つものであり、長い歴史の中で広く人々に共有され、
当たり前すぎて見えなくなっていること。

それがいまだに個人や社会を縛っている状況を、文献や実例をあげて、わかりやすく紐解いてゆく。

私たちは今、目のあるものを、当然で、変えられないものだと思いがちだ。
その背後にこの、集団的な、前提や思い込みがある。
そこで思考を停止する。抜本的な問題解決に向かうのではなく、今あるどうしようもなさの中で、少しでも楽に息ができる方向を探すようになる。

変えるためには、問題を正しく認識する必要があるが、前提に支配され、思考停止になっている状態では、この現状の把握が、難しい。

著者は、一つずつ、思い込みを引き剥がすように、

>なぜやりがいを感じずに働く人が多いのか。なぜ無駄で無意味な仕事が増えているのか。なぜ、社会のためになる職業ほど給与が低いのか。

仕事を「生産」としてのみ捉えることで、全ての労働が包括する「ケア」としての側面が、失われていく。

それはジェンダー論にも結びついている。なぜなら「ケア」労働は、ほぼ女性が担うものから始まっているからだ。

中世の農奴の労働時間は、平均で週40時間。日本のホワイトカラーより、農奴の労働時間のほうが短い。ブルシットジョブの膨張は、ケアリングの価値をOA化しようとする試みによって起きたもの、と著者は書いている。

>仕事の大多数が、生産的であるよりケアリング的

な社会で、

>他者に対する長期に渡るケアリングを可能にするのは予測可能な社会

>他者への愛は、自らが嫌悪しているかもしれない制度的構造が、保守されることを必要としている。

↑だから社会を変えるのは難しいのだというグレーバーの見立ては切なく、
しかし確かに一定の説得力を持つように思えた。

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