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「ボウリング」というキーワード

 いきなり突然、これまでとは無関係そうな単語が出てきて面喰らうかも知れません。
 でも、息子の進路選択を振り返ると、これは「避けて通れない」ものなのです。

■ きっかけ

 息子は結局、中学校では特に部活はやりませんでした。

 が、週末などに、ちょくちょくボウリングをするようになりました。
 たまたま息子が小5の頃に、筆者が「競技ボウリング」(マイボールとマイシューズでやる奴です)を始めたのですが、これに時々ついて来るようになったのが発端でした。
 そもそも筆者自身が「消化器系」に抱えている「持病」の発症で、飲食に制限がかかってしまい、晩酌もできなくなって夜間に「暇」を持て余したことが契機でした。
 なお、息子の身体障害の一部も消化器系ではあるのですが、直接の関係がある疾患ではないので、遺伝がどうのこうの……ではないと思います。
 そう言えば、近所のボウリング場(その後コロナ禍で廃業)で「投げ放題」とかあったな、と思い、気を紛らわせるためにやってみたところ、性格的に合っていたらしく、ハマってしまいました。
 今になって考えると、これが全ての「はじまり」だったことになります。

 でも最初のうちは、娘のほうがよくついて来ていました。

 小5の終わり頃に、町内会の「こども会」が毎年開催していた「ボウリング大会」に仲の良い友達も出るから、と娘が参加することになりました。
 当時の息子は、まだそれほど積極的ではなく「俺はいいや」と出ませんでした。

 しかしその後、息子もよくボウリング場について来るようになりました。
 最大手の「ラウンドワン」には「小中学生無料」というキャンペーン(と言いながらずっとやっていますが)があり、大人1人につき「小中学生」1人のゲーム代が無料になります。靴さえ買ってしまえば(実は2千円もしないで買えるものもあるので、4回くらいで元が取れます)子供は完全に「無料」になります。
 小6の最後には、息子も「こども会」の「ボウリング大会」に参加しました。日頃の練習の成果か、同級生から「上手いね」と言われて、嬉しかったようです。

■ 本格的に

 自宅から少し離れたところ(車で20分ほど)にある別のボウリング場で、夏休みなどに時々「こどもボウリング教室」をやっていたので、息子を参加させてみることにしました。

 最初の1回だけは、筆者がついて行きましたが、夏休みとはいえ平日だったので、2回目からは、バスやモノレールを乗り継いで、一人で行かせました。参加費は、1回500円くらいでしたので、息子に持たせても大丈夫だろうと。
 この頃は、ボウリングそのものよりも、一人で出かけて何かに参加するトレーニングという面を意識していました。
 一人での「お出かけ」も慣れてきましたし、何かを「自分だけで」できるようになることは、本人にとっても自信につながったのではないかと思っています。

 その教室をやっていたボウリング場では、毎月1回「親子ダブルス大会」(親・子各2ゲームの合計スコアで競う)というものを開催していました。
 「マイボールの部」と「ハウスボールの部」があり、筆者は既に「マイボウラー」でしたが、息子に合わせてハウスボールを使って「ハウスボールの部」に一緒に出るようになりました。

 実は、その「ハウスボールの部」の参加者はあまりいなくて、マイボールの子がほとんど(後述しますが「ガチ勢」なジュニアの多いボウリング場)だったのです。
 その分、たいてい「ハウスボールの部・優勝」になります。とはいえ、ハンディキャップ込ならマイボールの部の優勝者を上回ることも少なくなかったので、自信が付いたようです。

 ハウスボールの部で10回「優勝」したのを機に、息子もマイボール(12ポンド≒5.44㎏)を作ることにしました。
 最初の頃は、6ポンド(≒2.72㎏)のハウスボールでスタートしましたが、練習するに従って、重いボールでも投げられるようになり、10~11ポンドのハウスボールが投げられるようになっていました。指に合わせて作るマイボールならば、それより少し重くても大丈夫、ということで、12ポンドにしました。

 ボールを作ったのは、中2に進級するタイミングだったのですが、そこから、そのボウリング場で毎週あった「ジュニア練習会」にも参加することにしました。
 この「練習会」を指導してくれるのが、実は日本の「トップアマ」とされる人たち。プロテストを受ければ絶対合格する筈ですが、全日本ナショナルチームの活動を続けるため、アマチュアとして活動を継続している人たちです。
 そのため、県内各地のジュニア(就学前から高校生まで)が集まるような場でした。他のセンターのクラブに入っている子も、この人たちの指導を受けるために、時々参加していたりするほどです。親子大会で「マイボールの部」のほうが多くなるのも合点がいきます。

 「競技」「スポーツ」としてのボウリングなので、技術面ももちろん教えてくれるのですが、挨拶やコミュニケーション、礼儀などにもかなり力を入れています。
 また、他のプレイヤーと直接の「接触」があるスポーツではないことから、おとなしい子や、息子のように「激しいスポーツ」が苦手な子でも始めやすいと思います。

 また、余談ですが、実は「腕力」とか「握力」は意外に使いません。
 使うのは「力」ではなくボールの「重さ」そのもののため、その「重さ」がかかる分、むしろ「足腰」のほうが重要になります。そのため、老化防止や健康維持にもお勧めの「生涯スポーツ」(実際「後期高齢者」のボウラーも少なくない)だと思います。

 そして、このボウリングとの出会いが、この先の息子の進路に大きな影響を与えることになるとは、全く予想もしていませんでした。
 ボウリングそのものだけでも、原稿はいっぱい書けそうなのですが、それは本旨ではありません。
 ただ「特別な支援が必要な障害」がある息子の「成長」について書こうとすると、どうしてもボウリングが「キーワード」になるのです。

■ 「療育」における「ボウリング」

 実は、療育の現場でも「ボウリング」は手軽に(そういう場所さえあれば)できるスポーツ(というよりレジャー・レクリエーション)として利用されることがよくあります。

 地域療育センターでの通所療育の中でも、「外出企画」的に、横浜市障害者スポーツ文化センター「横浜ラポール」のボウリングルームに行くプログラムが組まれたことがあります。
 また、息子が利用している放課後等デイサービスでも、土曜日プログラムとして時々「ボウリング」をしています。

 基本的に守るべきルールとしては「靴を履き替える」「投げる順番を守る」「ファールラインを越えない」「隣のレーンと同時には投げない(隣で投げようとしている人がいたら投げ終わるまで待つ)」「他人のボールを使わない」くらい(でも意外と知らない人も多い)です。
 あとは他の人が「ストライク」や「スペア」を取ったら拍手しましょう、くらい。
 なので、そこだけを伝えるようにすれば大丈夫。

 両手で投げようが(プロボウラーでも意外に「両手投げ」がいますし、今や「トレンド」らしいです)、真ん中まっすぐで投げようが、端から斜めに狙おうが、思い切り曲げようが「自由」です。ボウリングの腕前は「プロ級」という噂もある桑田佳祐さんの歌にも、そんなのがあります(笑)。

 横浜ラポールには車椅子用の「スロープ」もありますし、視覚障害用の音声ガイダンス装置もあります。
 一般のボウリング場でも、幼児向けに投球スロープを用意している所がほとんどですし、ガターにならない「バンパー」があるところも多いです。
 ボウリング場さえあれば、誰でもできるスポーツですが、最近はボウリング場そのものがかなり少なくなってきたのが寂しいところです。

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