【40秒小説】ふたりだけのかくれんぼ
「もういいかい?」
ミヨちゃんを見つけたら
ヘビのおもちゃで驚かせてやろう。
「まーだだよ」
タケトくんに見つかったら
おままごとで遊んでもらおう。
今回のタケトくんの役は
ドングリをステーキだと思って
一生懸命食べるパパを
不憫な目で見るママの隣で
エサを忘れられてお腹を空かしている
ワンワンになってもらおう。
「もういいかい?」
ミヨちゃんを見つけたら
この前ドッジボールでミヨちゃんばっかり狙っちゃったことをごめんねしよう。
「まーだだよ」
タケトくんに見つかったら
クラスの交換ノートに
「タケトくんが給食の肉じゃがのことを先生って呼んで、先生のことを肉じゃがって呼んでいた」
って書いたのは実は私だって教えよう。
「もういいかい?」
ミヨちゃんを見つけたら
中学の怖い先輩にいじめられてることが
バレないように腕の傷を隠しておこう。
「まーだだよ」
タケトくんに見つかったら
あの悪い先輩のタバコに
激辛タバスコかけておしおきしておいたから、もう大丈夫だよと伝えよう。
「もういいかい?」
ミヨちゃんを見つけたら
模試で地理の点数が全国で327位だったことを自慢しよう。
「まーだだよ」
タケトくんに見つかったら
初めての彼氏ができたことを伝えよう。
「もういいかい?」
ミヨちゃんを見つけたら
アルバイトでお金を貯めて
初めて金髪にしたイケてる姿を見せてあげよう。
「まーだだよ」
タケトくんに見つかったら
髪型が全く似合ってないってことだけを
伝えよう。
「もういいかい?」
ミヨちゃんを見つけたら
君を泣かせたあいつを
ぶん殴ってやったことを伝えよう。
それと、その後100倍ボコボコにされたことは内緒にしておこう。
「まーだだよ」
タケトくんに見つかったら
弱いクセにバカだって教えてあげよう。
それと、今度から髪は
私がお店で切ってあげるって言おう。
「もういいかい?」
ミヨちゃんを見つけたら
初任給で買った
超かっこいいバイクに跨がって
爽やかに手を振りながら駆けつけよう。
「まーだだよ。」
タケトくんに見つかったら
デートの時に
誇らしげな顔でママチャリに乗って
大声で手を振りながら来るのは
恥ずかしいからやめてと伝えよう。
「もういいかい?」
ミヨちゃんを見つけたら
指輪を渡そう。
ミヨちゃんがいるところはわかってる。
きっと、あの場所だ。
「もういいよ」
タケトくん
いつもどこにいても私を探してくれて
ありがとう。
そして、
私の幸せを見つけてくれてありがとう。
サポートくださった方のユーザー名を心の中で大叫びして感謝します。本当にいつもありがとうございます。