【エッセイ】らいあーげーむ
~皆様の中で人生で1度も嘘をついたことがない人はいますでしょうか?~
そんなアンケートを取った結果
25人に1人が人生で1度も嘘をついてないと答えたそうです。
そのアンケートを答えた人が
そもそも嘘をついていたならば信憑性に欠けますが…
嘘をつくのは悪いことですが
時には嘘で人を守れることもありますので
不思議ですよね。
そんな嘘にまつわる話を今日はしたいと思います。
どうか皆様お聞きしていただけないでしょうか?
私にはカズマくんという友達がいます。
そのカズマくんは小学生の頃、
とてもピュアな心を持っていて
私が嘘つくもの全て信じていました。
例えば、
「俺の家族、実は全員フランス人で
月に1回はフランスパン食べないと
フランス人でいられなくなっちゃうんだよね…」
というウソを伝えると
その日以来、給食の献立にフランスパンがでないかチェックしてくれるようになりました。
そんなカズマくんの優しさも虚しく
小学校6年間でフランスパンがでたことは
ただ1度もありませんでした。
私自身そんなウソをついたことを忘れていた数ヵ月後に
「モンキーパンツは、まだフランス人?」
と聞いてきた時は
「この人は何を言ってるんだ?」と混乱しました。
ちなみに私の家族全員思いっきり日本人顔です。
また、
「俺、テレビに手をかざすだけで
電源点けられるんだよね」
というウソを伝えてから
テレビの前で手をかざして
「はぁぁぁあああああああ!!!!」と
気合いを入れている間に
隠れている弟にリモコンでテレビを点けてもらうと
カズマくんは口を全開にして驚いていました。
カズマくんも
テレビに手をかざして
「はぁぁあああああああ!!!!」
「うらぁぁああああああ!!!!」
「ぬぬぬぬむむうわあああ!!!!」と
いろんな声で顔を真っ赤にし挑戦してみますが
当然隠れている弟とは打ち合わせ済みで
何も起こりません。
それ以来、カズマくんは
私に尊敬の眼差しを向けるようになりました。
少々良い気分でしたが
校庭を散歩していた校長先生に
「校長先生、この人リモコン使わないでテレビ点けられるんですよ!」と言った時は
かなり焦りました。
ほかにも、
「カズマくんの好きなチカちゃん(仮名)って、
チューリップから生まれてきたらしいよ!
この前チカちゃんから教えてもらったから本当だよ!」
というウソを伝えると
公園でチューリップを見るたびに
「お義父様こんにちは」と話しかけるようになりました。
もう1度言いますが
カズマくんはとてもピュアな心の持ち主なのです。
そんなカズマくんも寂しいことに
中学生になるにつれてあまり私の嘘を信じてくれなくなりました。
私がウソをついてからかおうとしても
「ははーん、また俺にウソをついて騙そうとしているなー」と
眉をひそめて信じてくれません。
当然ですが
チューリップを見ても挨拶をすることはなくなってしまいました。
私は少し寂しい気持ちになりました。
そんなある日、カズマくんが
私の家に遊びに来ました。
2人で私の部屋で
漫画を読んだりゲームをしたりしていました。
すると、カズマくんが
突然「わっ!なんだこれ!!」と
騒ぎ始めました。
どうやらカズマくんの着ているジャージが
ほつれて、糸がピョコッと飛び出ているようでした。
カズマくんは、
「ごめん、ハサミ貸して」と
私の勉強机の引き出しを開けようとしてきました。
私はその瞬間、大慌てで
カズマくんの引き出しを開けようとする手を掴み阻止しました。
なぜ、カズマくんが引き出しを開けようとするのを阻止したかというと
当時の私には誰にも言えない秘密があったからなのです。
それは、
こっそり自作のマンガを描いているということでした。
今の時代、自作マンガがSNSで
たくさん投稿されているので
マンガを描くというのは
珍しいことではないのかもしれませんが
当時はSNSもあまり普及されていなくて
自作マンガを描いているのは自分ぐらいだと思っていました。
そして、その自作マンガを
人に見られるというのは
一生の心の傷ができるぐらい恥ずかしいことだと思っていたのです。
家族にすら隠して勉強してるふりをして描いていましたので
同級生に見られるなんて最悪です…
絶対に絶対に
阻止しなくてはいけないことなのです!!
私があまりにも慌てて引き出しを開けるのを阻止するものですから
カズマくんは怪しみました。
「な、なんだよ…
この引き出しに何が入ってるんだよ…?」
「え、えと、なんでもないよ」
「いやいや、その慌てよう、
なんでもないわけないだろ…
お、教えろよ、気になるだろ…」
絶体絶命のピンチです。
もうほぼ詰んでいます。
こんな状況、何言っても怪しまれるに決まっているじゃないですか…
私は必死で
部屋の中から何か打開できるものはないかと探しました。
母が作ってくれた薄いカルピス…
父が貰ってきた広末涼子のポスター…
姉に借りているT.M.RevolutionのCD…
弟が木の枝で自作した弓矢…
ダメだ…
打開策がない…
私は無我夢中で
何か適当な嘘を考えようとしました。
「えと、
その、あ…えと…
そうそう…
2000年前…」
「は?2000年前…?」
ヤバい…嘘の入りを壮大にし過ぎた!!
カズマくんは、真剣な顔で私を見ています…
「あ!
いや!
違う!!!」
早く修正しないと…!!
「そ、そうだ!!
せ、1500年前だ!
1500年前だったわ!!」
またしても、やってしまいました…
そんなに変わってないじゃないですか…
結局壮大な入りのままです…
でも、もうこれで
とにかく勢いで押しきるしかありません!!!
「この引き出しの中にはぁぁああ!!
1500年も前からぁぁあああ!!!
漬けてる大根がぁああ!!
入ってるからぁああ!!!!!!
絶対にっっっ!!!
絶ーーーーーー対にぃぃいい!!!!!!
開けないほうがいいよぉぉおおおおおおおおおお!!!!!」
我ながらあまりにも意味不明な嘘です。
さすがに信じてくれないでしょう…
学校中にバラされてしまって
これから私は笑い者です…
私が絶望していると
カズマくんは急に鼻をスンスンして
「ん、確かに!
言われてみれば、なんかこの部屋
…臭いな!!」
と言いました。
カズマくんはそれ以上引き出しのことを
聞くことはなく、いつも通り接してくれました。
私はホッと、胸を撫で下ろしました。
良かった…
本当に良かった…
でも、
自分の部屋は
1500年前から漬けている
大根の匂いがするのだと
知りたくなかった事実を知ることになり
ショックを受けました。