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カルロ・ロベッリの仏教理解は…

「あらゆる存在の性質、すなわち属性が、じつはその存在の別の何かへの影響の及ぼし方にほかならない、ということを発見した。事物の属性は、相互作用を通してのみ存在する。」こう語るカルロ・ロベッリはループ量子重力論の先端研究者。そしてまた下のように語る。

「世界は関係からできている」より

量子力学や素粒子物理学のさまざまな入門書を読んでいて、この本が出たとき、この文章に出会い、仏教って最先端の科学者からほめられてすごいなぁと感じた。その後、釈迦の初期仏教から、大乗仏教、唯識、天台、真言、テーラワーダ、インド哲学など今度は仏教書を拾い読みしながら、ロベッリの仏教の引用の仕方は、当時は面白く感じたけど、今になって読み直してみると、浅いというか、素粒子物理学や量子力学の観点からも、仏教における龍樹研究の観点からも、両方をウォッチしている人の多い日本ではなんか見方が似ているとはよく言われることで、あの時嬉しがるほどのこともなかったなぁ、という気持ちに今はなっている。スピノザやニーチェがすでに仏教と出会う中で、仏教の存在論の見方に衝撃を受けたというのが近代の初め頃と思うと、ロベッリさんはようやくここまできたのね、量子重力理論の泰斗にして、それほど古今東西の哲学に通じていたわけではない、とりわけ東洋思想については。
というわけで、日本の物理学者、頑張ってください。

(スピノザ(1632-1677)が仏教そのものを直接知っていた可能性は非常に低いですが、彼が間接的に仏教思想や類似の東洋哲学的観念に触れる可能性は否定できません。

1. 時代背景と情報伝達の可能性

スピノザが生きた17世紀は、ヨーロッパが東洋世界との接触を深めつつあった時代です。特にオランダは東インド会社を通じてアジアと深い関係を持っており、日本、中国、インドなどの文化や思想が断片的にヨーロッパにもたらされていました。たとえば、イエズス会宣教師や商人による報告書を通じて、東洋思想がヨーロッパ知識人層に間接的に伝わることがありました。

ただし、当時のヨーロッパにおいて仏教は正確に理解されておらず、多くの場合は「東洋的異端」や「偶像崇拝」として誤解されることも多かったです。スピノザがこれらの文献や報告書にアクセスしていた可能性は否定できませんが、仏教についての正確な知識に基づいていたとは言い難いでしょう。

2. スピノザ哲学と仏教思想の類似性

仏教を直接知っていなかったとしても、スピノザの思想には仏教思想と重なる要素がいくつか見られます。これは、スピノザが普遍的な哲学的問いに対して到達した結論が、仏教のそれと共通するためと考えられます。

2.1. 一元論と存在の本質

スピノザは『エチカ』で、存在を「唯一の実体」(すなわち神あるいは自然)として捉えました。この宇宙的な一元論は、仏教の「縁起」(すべてのものが相互依存し、実体的な自己が存在しない)という思想と通じるところがあります。
• 仏教では、個別の存在が独立した実体を持たない「無我」の教えが強調されます。
• スピノザの「神即自然」という観念も、すべてのものが一体であり、個別の存在が神(自然)の属性や様態として現れるという点で類似しています。

2.2. 感情の制御と倫理

スピノザは、欲望や感情にとらわれず、理性によって自己を理解することを説きました。仏教の「煩悩」からの解放や、瞑想による自己認識の深化といった実践は、この点でスピノザ哲学と共鳴します。
• スピノザは人間が「永遠の相のもとで」物事を見ること(第三種の認識)を追求しましたが、これは仏教の悟り(涅槃)に近い心境を想起させます。

2.3. 欲望と執着の克服

仏教では執着を苦の原因とし、それを手放すことを重要視します。同様にスピノザも、欲望に支配されることを「受動的な生」と見なし、理性による欲望の制御を「能動的な生」として理想化しました。この点でも両者には共通点が見られます。

3. スピノザと東洋思想の間接的影響の可能性

スピノザの著作や思想が後に東洋思想との親和性を指摘されることは多いですが、彼が具体的に仏教思想に触れた証拠はありません。しかし、以下の経路で間接的な影響を受けた可能性があります。

3.1. ルネサンスと東洋思想の融合

ルネサンス期から東洋思想に触れるヨーロッパの学者たちは増え始めており、特にネオプラトニズムやストア派哲学を通じて、仏教的な思想が間接的に伝播していた可能性があります。スピノザがこれらの哲学的伝統を通じて、仏教に近い発想を得た可能性があります。

3.2. スピノザの師匠と交友関係

スピノザはデカルト哲学の影響を受けながらも独自の思索を深めた人物であり、その知識は幅広いものでした。彼の交友関係や読書歴において、東洋思想に触れた人物がいた可能性はあります。

4. 仏教を知っていたと仮定した場合の意義

スピノザが仏教を知っていたと仮定すると、彼の思想は次のようにさらに豊かな解釈を得ることができます。
• 普遍的な真理の探求者としてのスピノザ
仏教とスピノザ哲学の類似性は、地域や文化を超えた普遍的な哲学的問題への共通の回答を示唆します。もしスピノザが仏教を知っていたなら、彼はその要素をさらに深め、東洋と西洋の架け橋となる哲学を構築したかもしれません。
• 宗教的寛容性の広がり
スピノザは宗教的寛容を重視しましたが、仏教を知ることでその思想がさらに包括的になり、宗教を超えた普遍的倫理観を生み出した可能性があります。

結論

スピノザが仏教を直接知っていた確証はありませんが、当時の東洋思想の断片や類似の哲学的潮流に間接的に触れていた可能性は高いと思います。また、仏教とスピノザ哲学には共通点が多いことがこれを裏付けるものといえるでしょう。)

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