丸太町〜吉田山

1.
学生時代、夏の盛り
暑さが少し陰った時分に気まぐれに出かけていった
丸太町〜吉田山辺りのことはよく覚えている

燃えるオレンジの夕陽と残像の路地裏
カラーでありながら白黒写真のような
鮮烈な一時

何気なく足を踏み入れた吉田山で
フイに日が傾き始める
夜へ向けてざわめき立ち、
深い緑の息吹を発しながら気配を強めていく木々達
下っていく階段のリズムと
徐々にぼやけていく視界

ようやくふもとに着く頃
濃厚な夕焼けの、最後の一滴は
闇の中へじわりと落とされようとしているところだった


2.
表へ無造作に出されたトマトの鉢植え
雨風に晒され続けた
プラスチックや発泡スチロールの容器
洗濯モノがはためく、トタンのベランダ
背丈ほどにまで伸びた空き地の雑草

見知った者同志が往来を行き来する気兼ねのなさが
家々をはみ出して
通りの方まで滲み出ている


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