「怪と幽」14号 記事紹介その二
「怪と幽」14号 記事紹介二つ目は担当したインタビュー&対談記事の御紹介です。
まずは特集から。
今号は第一特集が「奇想天外 きのこの怪」、第二特集が「幽霊と魔術の英国」ということで、私は後者で織守きょうやさんと河合祥一郎さんの対談、そして東雅夫さん・下楠昌哉さん・中島晶也さん・土方正志さんの英国文芸座談会のまとめをしています。
子供時代や高校生活を英国で送られた織守きょうやさんは先般『英国の幽霊城ミステリー』と題するイギリスの幽霊屋敷ガイドブックを上梓されたばかり、河合祥一郎先生はシェークスピアの専門家であると同時に英国文学に描かれた幽霊表象について専門書を書かれている碩学です。
案の定、専門的立場や実地見聞が交差する読み応えたっぷりの対談記事になりました。
キリスト教圏でありながら民俗的幽霊譚が残るお国事情など、興味深い話題が満載です。
続いて四人のおばけ好き紳士(と書いて”おじさん”と読む)による座談会は19世紀末から20世紀初頭英国怪談文学を中心に、我が邦の翻訳事情についておもしろい話が次々出てきました。いずれも興味深い話であったものの、平井呈一が中心だったがゆえに低俗ホラーが長らく等閑視されていた、という指摘は非常に重要ではないか個人的には思いました。
なかなか深い座談会になっているので、英国文学好きなら必読かと。
毎号の常設ページ「お化け友の会ひろば」では、三上延さんと高木道郎さんのインタビュー記事を書いております。
三上延さんは言わずとしれた「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズで大変な人気を博す小説家であるわけですが、新作の主人公はなんと内田百閒。あの偏屈おじさん文豪です。百閒は三上さんの原点とも言うべき作家であるそうで、私も一百閒好きとして楽しくお話を伺いました。
インタビューの際に見せてもらった「百閒好き嫌い辞典」は圧巻でしたよ。あれも出版してほしい!
なお、『百鬼園事件帖』には百閒以外にも夏目漱石や芥川龍之介といった文豪たちも登場します。それぞれの作品にも絡む設定で。
日本近代文学に詳しい向きなら「なるほど、これをこう使ったか!」と眼を見張ること請け合いです。
高木道郎さんには今春出版された著書『海之怪 海釣り師たちが見た異界』について伺いました。
高木さんは長らく釣り方面で活躍されていたライターで、とりわけ磯釣りに関しては業界で知らぬ者のいない猛者でいらっしゃるそうなですが、怪談を出されたのは今回が初めて。
でも、元々幻想文学やクトゥルー神話がお好きという、筋金入りの方でした。
山の怪談は多いけれども、海の怪談は限られてくる理由など、長年海とともに生きてきた釣り人ならではの見解やご自身の体験などを聞いております。
御著書も今どきの怪談実話とは一線を画す抑制の効いた筆致で、それがかえってリアリティを醸成する結果になっておりまして、fearよりatmosphereを重視したい読者には特におすすめしたいと思います。
少々長くなったので、本日はここまで。
明日は寄稿記事について御報告しますね。
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