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フィレンツェに住みたくない人なんている?

先日、友人カップルと食事に行った時のこと。
2回お互いの都合が合わず、3回目の試みで、約1ヶ月強ぶりに会った。
顔合わすやいなや、「実は、職場にフィレンツェへの異動願いを出していて、受領されたら引っ越す予定なんだ……」というビッグニュースを放つ。

彼らふたりは出会った時からトスカーナ州フィレンツェとリグーリア州サヴォーナ在住の中距離恋愛カップル。ほぼ週末毎にお互いのところを行ったり来たりという移動を約16年続けて来た。電車では乗り換え時間も入れて4時間半から5時間半、長距離バスでも概ね同じぐらいだろうか。長距離バス(FlixBus)が出て来てからは経済的にもより助かっているだろう。
それぞれの状況でどちらかが移動できずに1週間毎の再会が2週間・3週間毎になったり、コロナ禍では、州越え移動が禁じられていた時もあるので、直接会えない期間もあっただろうけれど、ふたりとも移動のために多くの時間と費用を費やしてきた。
ある時期には、フィレンツェの彼女の方がジェノヴァ辺りの職場に転職活動を試み、リグーリアの方に転居することを考えていたが、研究職で限定されている職種のため、なかなかこちらでは実を結ばず、その案はいつの間にか途絶えていた。
彼の方も現職以外に、アルツハイマー研究を支援する非営利団体を立ち上げ、その関連で移動することを考えたものの、それだけで転居することは難しかったのか、今の状況に至っていた。

2年前の彼のお母さんの誕生日にお祝いの電話をした時のこと(イタリアあるあるのひとつ、家族ぐるみで交流がある人たちなのだが)、わたしからもふたりに結婚を促してくれないか……と彼女に懇願されたが、お互いの仕事のこともあるから、そこまで言える筋ではないことと、彼らも彼らなりに一緒にいられることを考えているのだろうと、例などをあげて説明はしていたことがあった。そして、お母さんからわたしにそういう話があったことは、彼らには告げてはいなかった。
そのお母さんの今回の決断に関する反応を聞いたら、喜んではいないとのこと……
年老いて健康的な心配のあるお母さんからすると、同居していなくても、それほど頻繁に会いに来なくても、やはり近くに住んでいた息子が少し遠くに行ってしまうのは心もとないのだろう。ふたりの結婚を望んではいるものの、近くに居住することが前提にあったのだろうな、と。

彼の仕事柄、転職せずとも勤務地を変えることが可能であることは助かっているものの、いつ受領されるかは未定とのこと。以前に同僚が結婚のためにコモの勤務地への異動願いを出したそうだが、実際に移れるまでに2年かかったという。
それにもかかわらず、善は急げとばかりに、現在住んでいるアパルタメントを関心があった友人に売却する手続きをしたそうだ。友人だから、すぐに引っ越しできない場合には、家主になった後も住まわせてくれるかもしれないし、それが無理だったら、ジェノヴァにアパルタメントを借りるとのこと。
今さらながら、「結局、自分がちょっと犠牲を払ってるような気がする……」とこぼす彼に、彼女は「フィレンツェに住みたくない人なんている!?」と言い放った!
彼女はフィレンツェ出身ではないものの、大学時代からフィレンツェ暮らしで、国外に数年留学していた時期以外はフィレンツェ在住なので、第2の故郷のような町なのだろう。友人・知人・同僚などのネットワークも、馴染みの場所もあり、居心地が良いのだと思われる。
観光の中心スポットからは徒歩ならば小1時間ほどの住宅地に位置する賃貸のアパルタメントに住んでいるが、彼が引っ越ししたら、購入できる物件を探すのかもしれない。金額面で市外も検討したい彼に対して、彼女はやはり市内を好んでいる。

それにしても、「フィレンツェに住みたくない人なんている!?」とは、なかなか強気な発言だ。
「フィレンツェに住みたくない人なんているわけないでしょ?」という反語だもの。
それは、サヴォーナやジェノヴァでは、言えないフレーズだ……
日本の都市に例えるとしたら、フィレンツェと姉妹都市を結んでいて、地形や気候や内外からの観光客がたくさん訪れる点で類似する京都あたりだろうか?
「京都に住みたくない人なんている?」

読者の方の中には、知っているだけでも、フィレンツェや京都が大好き、何度も/か訪問したことがある、在住しているという方はいらっしゃると思う。該当する方にすると、もしかしてこのフレーズはしっくりくるのかもしれない。








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Jacqueline
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