ベビーピンクの後ろ姿
先週、付き合いのある女子大学生の誕生日だった。
家から徒歩15分程のところに住んでいるものの、約1年ぐらい会っていない。
連絡も昨年の8月のわたしの送信を最後に途絶えていたので、やや躊躇したのだが、その日のうちにバースデーメッセージを送ってみた。
すると、お礼と共に、大学の過度な多忙さに追われ、すっかりご無沙汰していたという旨が綴られた返信があった。
本心か社交辞令かはかりかねるものの、時間を見つけ次第、会いに来るようだ。
そのメッセージにはすぐに返信をしていなかったのだが、特に他意があったわけではなく、あとで返答しようと思っていた。
数日前、ウォーキングをしていたら、前方から話しながら歩いてくる二人組がいた。
わたしから見て右側の若い男性が、何か左側にいる人にしきりに話しかけているのに気を取られつつすれ違った。左側の人の顔は見ていなかったので、性別すら認識していなかったのだが、なぜか、数メートル程歩いた後、わたしは振り返った。
そこで、その人は女性だったことが分かる。
おや?あの後ろ姿は、もしかして……
ベビーピンクのTシャツが、わたしの目にやわらいかな印象を残した。
昨年、しばらくぶりに会った時に、見て分かる程にほっそりとなったそのカーブはそのままなような。
翌日、わたしは前述の彼女に返信した。
近況を聞けて嬉しい、と。
そして、わたしの見立てが正しかったかどうか確認するために、「もしかして、昨日、わたしたちは道ですれ違ったかしら?」とも。
しばらくして、返答が来る。
「はい、わたしは彼と一緒でした。挨拶したかったのですが、そうしていいものかどうか……と。なんだか、わたしのことが分からなかったようだったので……」
ああ、やっぱり!
わたしは間違えていなかった。
すぐに、ぼんやりしていて、彼女の顔を見ていなかったので、気が付かなかった旨を伝えた。
でも、振り返って、後ろ姿はほぼ彼女ではないかと分かったことも。
もし、付き合っている人が変わっていなければ、昨年話していた彼が、その男性なのか。
写真を見たわけでも、具体的に想像していたわけでもないので、わたしはまっさらの状態でその彼を目にした。しかも、その時には、単なる通行人としての数秒で、彼女の彼だとは知らずに。
だから、彼にもう一度どこかで出くわしても、彼女と一緒でなければ、認識できない可能性は大だと思う。
瞬間の記憶では、背丈は175cmから180cm、わりとスリム、髪は黒ではないだろうけれど、ダークカラーで短か過ぎず長過ぎず、黒っぽい服装。
その人が、以前に聞いている人だと仮定しての話だが、昨年の受験がうまく行っていれば、彼女の大学入学から1年違いで医学部に通っているはず。
彼らは高校の同級生だったとのこと。
彼女にとってはじめての彼(だと思う)。
イタリアのカップルによく見られるように、お互いの家族ぐるみの付き合いをしているので、彼女が彼の家族と旅行をしたり、親族の行事に招待されることもあれば、反対に彼が彼女の家で夕食を共にすることもあるとのこと。
わたしたちが、偶然、近隣の道ですれ違ったということは、彼が彼女の家に遊びに来ていたのだろう。
彼女は真面目なので、交際相手がいるからということで、あまり勉強をおろそかにするタイプではないと思うが、花開いた初々しい甘い青春期に、しっかり幸せな気分を味わってほしいと願う。