【書評/感想】「わたし、定時で帰ります。」を読んだら、もっと自分のことを大切にしたくなった
今回は、仕事もプライベートもどちらも大切にしたい人におすすめの本。
「どうやって働いていきたいか」だけでなく「どうやって生きていきたいか」を考えるきっかけを与えてくれる、そんな本をご紹介。
【この本との出会い】
完全に一目惚れ。このタイトルを見た瞬間、ビビビッときた。
この本に出会ったのは、転職前。まさに自分のやっている仕事に自信が持てず、仕事に無駄が多いな、と嘆いていた時。
「本当に必要な作業なのか」「そもそもこの作業の目的は何なのか」と周囲に問いかけても回答はなく、自分で考えて導き出した答えもチームで共有される余裕もなく、それぞれが流れてくる作業を捌くことで精一杯の毎日。
そんな中で「どうやって定時で帰るのか?」「定時で帰っても、周りのヒンシュクを買わないのか?」とそんなことを考えながらこの本を手に取った。
【書籍情報】
タイトル:わたし、定時で帰ります。
発行日 :単行本)2018年3月30日
著者 :朱野帰子。東京都出身。他の著書は「駅物語」「海に降る」等
【概要】
定時で帰ることをモットーにしている32歳独身女性「東山結衣」が主人公。
無能な上司、仕事中毒の元婚約者、主人公と同じく定時に帰りたい派の現婚約者、主人公の考えと対立する同僚、社会の理不尽に押しつぶされて離脱した若者等、今を取り巻く労働環境の問題に対し、定時帰りをモットーする彼女がぶつかり奮闘するものがたり。
【感想】
やりすぎだろ・・・と思うシーンはあるものの、ものすごく共感できる話が多く、おもしろい、の一言。
仕事に対する考え方や想いの違いを理解するには、もってこいの作品。
色々な考え方や働き方が描かれているので、自分が何を軸として働いていきたいのか、そんなこと考えるきっかけを与えてくれる。
定時で帰るためには普段から生産性の高さが必要だし、プロジェクトによっては特定のスキルが必要なケースもある。そして、生産性を高くキープし、スキルアップしていく為には、プライベートでも学び続けることが必要。
ただ、その学びは、必ずしも務めている会社にいれば得られるものではない。
どこで何を学ぶのか、どこに対して自分の時間を割きたいのかを考えると、時間は有限なのだから、おのずと自分が大切にしたいものが見つかるはず。
自分がどんなことに自分の時間を割きたいのかを考えたら、もっともっと自分のことを大切にしたくなった。
ものがたり序盤の結衣みたく、残業なんてせずにさっさと家に帰り、缶ビールを飲むことを目標にするのも、大事なことだよね、と。(笑)
では、ここで印象に残ったシーンをご紹介。
「来年結婚、三十三歳で長女出産、育児休業を三年取得、三十六歳で長男出産、ふたたび育休を三年取得後、子育てが楽になるまで時短勤務希望ー」
結衣が職場に提出したキャリアプランに記載した内容。極端だけれど、ここまではっきりプライベートを重視しますといった態度は爽快。
たしかに、仕事も結婚も自分というたった1人の人間が経験することなんだから、同じ時間軸にあるわけでまったく別ラインにはならないと思うと、結衣のキャリアプランにも納得。
ただ、さすがに今の会社でもここまでのキャリアプランを出せない。(笑)
「自分の部下のことを思ってください。
福永さんの見積もりが仮に通ったとして、利益は出るんですか?部下に十分な給与と休暇を与えることができますか?そのことを真剣に考えてください。それがマネージャーである福永さんの仕事です。」
取引先の顔色だけをうかがい、無茶な見積もりを通そうとする上司に対し、主人公の元既婚者が放つことば。
マネジメントする立場に今はいないけれど、自分もこういうスタンスで仕事をしていきたいと心から思う。
「内助の功なんて時代遅れなこと、ドヤ顔で語られても、こっちはドン引きです。そりゃあ、家のこと何もしなくていいなら良い成果が出せるでしょうよ。でも、そんなの普通ですよ。並ですよ。」
産休後復帰し、焦る先輩社員に結衣が伝える言葉。
女性としては、ものすごくスカッとするとても素敵な言葉。
制限時間があると思うと脳は自然と無駄な業務を省いていくものだ、と。
グダグダ仕事をする部下に対して仕事を教える結衣が、思うこと。結衣自身も社長から、これを教わり、実践して、高い生産性を保っている。
よし、であれば、私も明日から自分の仕事に対して、制限時間を設けよう。
年を取ると人は弱くなるものだなと思った。いつか仕事ばかりの人生だったことを後悔する日が来るのだ。
炎上プロジェクトに奮闘する結衣が父との会話の中で、ふと思うこと。
いつか後悔するなんてありえない。
”今”を生きているんだから、”今”にフォーカスして、もっと正直に生きられるようにしたい。どうやったら実現できるのか、そのためにどんなことができるのかを、もっともっと考えて行動していきたい。
「急激に変わっていく世の中についていけなくて、会社に居場所がなくなるんじゃないかって怯えてて、でも誰にもその気持ちを言えなくて、みんな怖いんです。」
残業ができないように制度を整えても残業がなくならない会社の状況に対して、結衣が思っていること。
その通りと思う反面、そういった人たちが会社にしがみつくからこそ、残業は減らないし、その会社の生産性は落ちていくものだと思う。
だからこそ、結衣の言葉に返す社長の言葉がとても心に響いた。
「仕事だけしていたら孤独になるのは当然だ。家と会社の往復。狭い人間関係。変化にも弱くなるさ。自信もなくなる。そんなんでいい仕事ができるか?否だ。」
まさに、欲しかった一言。
大切な言葉だと思うから、もう一度。
仕事だけしていたら孤独になるのは当然だ。家と会社の往復。狭い人間関係。変化にも弱くなるさ。自信もなくなる。そんなんでいい仕事ができるか?否だ。
職場の人にどう思われるかではなく、自分がどうしたいかを考えよう。
家と会社の往復をやめて、いろいろな人と会おう。
私自身、この本を最初に読んだときは会社と家の往復の繰り返しで、狭い人間関係、自信なんて皆無だった。
それが、会社を辞め転職し、新しいコミュニティに参加し、自分の知らない情報が入ってくるようにしたら、大変だけど毎日をポジティブに過ごすことができている。転職は極論だけれど、立ち止まって考えて、自分のできることを実行していくってものすごく大切なことだと感じている。
【総評】
若手に限らず上の世代の人にもぜひ読んでほしい。
"働く"ことに対する色々な考え方に触れることができ、「どうやって生きていきたいか」を、立ち止まって考えるきっかけを与えてくれる本。
小説や本を読むことが苦手な方でも、まず、書店に行き、この本を手に取り、本のカバー裏を見てほしい。
働く人のホンネがそこにあるので、それだけでも楽しめるはず。
(ホンネで埋め尽くされています。笑)
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