ひみつのおやつ
秘密・・というのは、やはり気になるものだ。それが知らない人のことであっても、秘密という言葉だけに気になる。中身が気になる。
限定というのも似ている感じがするが、秘密はその後ろに背徳感のような、ある意味では不正義が潜んでいるような気がする。
誰にも言わずに、自分だけの秘密にすることは、きっと立派な秘密だろう。それを、誰かに話した瞬間に、秘密の壁は崩れていくことになる。相手ときちんと誓約書のようなものを書いているというのなら話は別だが、往々にして何処かで、濃淡はあれ、真偽もまたあやふやになるけれども、口外されるものだと思う。
秘密を破るのは、たった一人の自分だけ
という言葉を聞いた時、なるほどと思った。秘密をバラしているのは、まず最初は自分である。
結局「これは秘密だからね!」みたいなことは通用しない・・どころか、逆に記憶を強化し、誰かに話したくなる、いわば”麻薬”のようなものなのではないかと、そう思う。童話の「王様の耳はロバの耳」・・がそれをはっきりと示しているのだから。
そんな秘密を、家族で共有するのは結構楽しいものだ。特に子どもと行動している時に「これはお母さんには内緒だからね」みたいなことは、父親なら一度くらいは経験があるだろう。すぐバレるから、本当にダメなやつは、やめておいた方がいい。
今朝、僕はいつも通りに目が覚めたが、下の子もむにゃむにゃと目が覚めてしまったらしい。そりゃ近くで目覚ましがなっていたら、気になるだろう。妻のスマホがアラームを鳴らしていた。
妻がアラーム設定した時刻だったけれども、当の妻は無音の別室にいるかのように、すやすやと眠っていた。
僕はあまり寝起きが悪くないので、気候がよければすぐに布団から出るタイプだが、下の子もどうやらそんな感じらしい(と期待)。ガバッと起き上がり、座ってこちらを見ていた。
「起きる?下行こうか?」と聞くも、「イヤ」と、この時期のデフォルト回答。
結局、僕が立ち上がると「おりるぅー」と言って立ち上がり、こちらにやってきた。なら、初めからそう言ってよ。
下に降りても、子は特にやることがないし、僕も子がいることで家事ができなくなってしまうので(ふだんは、味噌汁を作り→洗濯物を干し→浴槽を掃除し→食洗機の食器を片付け→noteを読んだり書いたりしている)、noteを読んだり書いたりすることにした。
子は、下に降りる際「おなかすいた。なにかたべたい。」と告げており、朝ごはんまでは我慢できない様子だったので、冷凍庫をのぞいたら、あった。
今川焼き・・中身はつぶあんである。
今川焼きは、地方によって呼び名が変わり、僕は詳しくないけれど、つい最近最終回を迎えた朝ドラにも、象徴的に登場していた(最終回だけを見て、なんとなくそんな感じがした)。
下の子は、最近は結構なんでも食べられるようになってきていて、大人が食べる玄米も美味しそうに食べる。上の子が苦手な生クリームなども、ペロリと食べてしまうのだ。今川焼きも、きっと食べられるだろう。
解凍しているうちに、コーヒーを淹れてカフェオレを作った。
子の分は、食べやすいように四つに切って皿に盛り、お茶とともにテーブルへ。
ひみつのおやつタイムの始まりである。
もちもち生地が香ばしく、あんこもしっかりと甘く、小豆の香りも残っていた。お店で、紙袋に入った熱々が提供されても、全く冷凍品と気付かないだろう。なかなか、おいしかった。
下の子も、ほとんど完食してしまった。四つに切ったことで、熱々のあんこは急速に熱を失って、食べやすい温度になり、一口目が中心部分から始まる薄皮具合も良かったらしい。外側の生地の厚い部分は苦戦しているようだったけれど、残すことはなく、それも僕は驚きだった。
「これは内緒だよ」と言ったか言ってないか覚えていないけれど、下の子は、僕が見ている限りでは、家族の誰にも「あさ、おまんじゅうたべたんだよぉ」とは言っていない。きちんと秘密を守っているのだ。
そんなわけで、こうしてnoteに綴った僕が、下の子との秘密を崩してしまったことになる。
なるほど、格言は正しいのだ。