宝石職人は磨く
なんとなく、冬の足音が聞こえてくる。つい先日、木枯らしが吹いたのも影響しているだろう。ハロウィンが終わり、少しずつクリスマスムードに変わっていく街の景色は、寒さと比例して煌びやかになる気がする。
冬が来るということは、秋が終わるということであり、それはつまり、モンの季節が終わる(一応ね)ということだ。
悲しい、悲しすぎる。
残り少ない期間、店頭に並ぶモンを堪能したい。
今年も何かと色々なお店でモンを食べてきたが、やはり変化することで、その美味しさが広がっているように思う。
コンビニなどで出会う美味しいお菓子、初めて食べたとき、これどこで作ってるの?と気になることがある。
バームクーヘンなら香月堂、スコーンなら平和堂、どら焼きなら米屋、アイスクリームなら赤城乳業のように、「またここでも会いましたね!」みたいな発見があると、そのお菓子がより身近に感じられるものだ。
しかし、日本全国で同じように売られている商品やメーカーというのは意外と少ないのかもしれない。特に、クリームを使った半生系のお菓子の場合、長い距離の輸送や保存に適さない。
ここで「このメーカーの美味しい」と叫んでも、実は関東圏だけでしか売られていなかった、ということも十分ある。
こんなにも予防線を張りながら紹介したいのは、「モンテール」というメーカーのモンである。
モンテールは、たいていスーパーやドラッグストアのチルド棚で見かけることが多い。オーソドックスなシュークリーム、プリン、カップケーキなどを作っているメーカーである。
秋が深まると、このモンテールが出してくるのが、モンのシュークリームとエクレアである。
以前、シュークリームの“シュー”は“キャベツ”を意味していると聞いたことがあった。対して“エクレア”は“稲妻”らしい。例え方もさまざまである。
昨年、今回と同じようなタイミングでお店で見かけて、それぞれを食べてみた。形こそ違うけれど、どちらも気泡を含み、香ばしく焼かれた生地と、中にマロンクリームとホイップの入っている柔らかいお菓子だ。
僕は、圧倒的にシュークリームの方が美味しかった(個人の感想)。それは、ケーキのモンの再現度という点で、シューのバランスが良かったからだった。
エクレアにはチョコがかかっている。これはエクレアというお菓子の定義上、かけなければいけないものだ。
ちなみに、お菓子好きなら、甘けりゃいいのかというとそうでもない。
チョコがかかっててお得かも、なんて思って食べてみると、中のクリームとの相性が…。チョコも少しビターめのアクセントを効かせた味で、もちろん美味しいが、マロンクリームの味が分からなくなった。
ケーキならば、台をチョコでコーティングすることは良くあるが、それはメレンゲの場合である。クリームのボリュームからしたら、僅かにある程度だ。しかし、エクレアは違う。チョコをかけねばならない。シューに比べて皮とクリームのバランスがいまいちなのだ。
エクレアである以上、モン風味にすることは再現度の点では、やや難しいのかもしれない。それは少し残念な発見でもあった。
僕がよく考えているモンの魅力とは一体なんだろうか。そう「変化するケーキ」であるということだ(誰も覚えちゃいない)。
ここまで書いてきたのは、【昨年の】シュー&エクレアである。
今年、満を持して棚に並んでいたのを発見し、迷わずシューを手にした。しかし、エクレアもシューの友人然として隣に並んでいた。
翌日、再びお店に寄ると、前夜と同じ場所にシューもエクレアもあった。値段を見ると、どちらも同じだった。あの美味しさが100円台で食べられるというのはありがたい。
モン好きとしては、エクレアも確認のために食べておくか程度で手に取り、レジに向かった。
店から出て、帰り道の公園でこっそりと頬張ると、まさかの事態が起きた。
美味しい!!チョコが邪魔してない!!
口の中に、チョコの食感はあって、皮とクリームもいる。完全にエクレアなのだけれど、モンとしての完成度が、昨日食べたシューに肉薄していた(気がする)。何これ⁉︎
暗がりの中、パッケージを見てみると、昨年は焦茶色のザ・ミルクチョコだった部分が、マロン風味の黄色いチョコに変わっていた。
マロンペースト、あるいはトップに乗る甘露煮のイメージなのか、栗感が増していたのである。これはすごい。変化するケーキ、モン。
そして、モンテール。
僕は、昨年のリベンジを果たしたような気がした。エクレアもモンになれる。やればできるじゃないか、モンテール。
驚くべきことに、シューもエクレアもカロリーは同じ数値を示していた。企業努力、という日々の研究の成果だろう。
そういえば、モンテールの社名のモンはモンブランのモン?などと思い調べてみると、モンテールという単語が、宝石職人ということらしかった。
並々ならぬ情熱である。彼らが作り出す宝石がおよそ150円で買えるのである。
ちなみに、モンブランシューやエクレアは、おそらく5年くらい前から発売されている(たぶん)が、もっと前からモンテールのモンとして君臨しているお菓子がある。
それは、モンブランプリンである。大きめのプリンにホイップとマロンクリームが絞られており、これもまた美味しい。思えば、このプリンとの出会いが
…これ以上書くと2,000字を超え、伝えたかったエクレアの美味しさが霞んでしまうので、この辺で我慢しておく。
宝石職人の日々の研鑽に感謝しながら、今日もシューにするか、エクレアにするか、迷うのである。