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ナイチンゲールは夜に歌う #書もつ
今日は7月4日、梨の日としても知られている(知らない?)。
稲城は、知る人ぞ知る梨の産地。あまり広くないこともあって、市場に出回るのはかなり貴重になってしまうが、特筆すべきはその甘さと大きさ。梨が好きな人は、絶対に試して欲しいのが、稲城の誇るその名も「稲城」という梨だ。
書もつシリーズということで、梨の本を探してみたけれど、思い浮かばず、”お直しの日”ということで、(無理矢理、)看護師の登場する小説を(笑)
ナイチンゲールとは、歴史上の偉人であり、看護師の祖としてあまりにも有名な存在である。怪我人や病人に対するホスピタリティの実践は、世界中の看護師に影響を与えているはずだ。
一方で、もう一つのナイチンゲールの存在がある。それは、鳥である。鳴き声が美しく、西洋のウグイスなんて別名もある。この鳥の名前は、人名からではなく古い英語で「夜に歌う」を意味する言葉が由来なのだそう。
ナイチンゲールの沈黙
海堂尊
医師である書き手が、臨場感たっぷりに医療現場を描く、チームバチスタシリーズの一作。今作の主人公は医師ではなく、看護師。小児病棟を舞台に、とある殺人事件の真相を追う物語。
主人公が冴えてきていて、スピードに乗れる続編らしい読み心地でした。現場とは、様々な仕事で用いられる眼前のその場のことですが、どれだけ日々をそこに注力しているかで経験が違ってくるのだと実感しています。子どもを視点に物語を作ると、何だか悲しさが迫ってくる感じがして、先が怖いです。この先には、何が待っているのか、あの人はどんな登場の仕方なのか、楽しみでもあり不安でもあります。
様々な伏線の回収がとても鮮やかでした。医療の尊さの影に、権威だとか人間臭さがあるという描き方は、受ける側としてはなんだか安心します。様々な職種が登場してくるのですが、驚いたことにすべて肯定的に人物像が構築されているのは見事でした。変な感想ですが、とても明るい世界観の中で、おとぎ話を聞いているような雰囲気すらありました。スピードに乗って読み進めるのが楽しくもあり残念でもありました。
実際の病院で、ここまで色々なことができるとは思えないが、エンターテイメントとしての小説を磨きあげてきたな、という印象を持った。
人の命を描くことは、そう簡単にできないもので、書き手の経験や願いが込められているのを感じた。命との距離がすべからく近い医師だからこそ、鮮やかに描くことで、現実のやるせなさのようなものを際立たせているのではないかとさえ思えてしまう。
生きたくても生きられない、まだまだ長い人生が待っていたはず、そんな言葉を目にするたびに、果たして自分はどう生きているのだろうと、不安になる。
口元が印象なサムネイル、infocusさんありがとうございます!物語はなかなか重ためです。ナイチンゲールが鳴く声も聞いてみたいですね。
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