動物の秋
幼い頃、いくつかの動物園へ両親に連れられて行ったことがありました。自転車で行ける丘の上の小さな動物園もあれば、電車に乗って駅から歩いて向かう動物園もありました。
そのうちのひとつ、電車を乗り継いで、当時はコアラのプリントされた電車で向かっていたのは、東京都立多摩動物公園。一般的に動物園と呼ばれている施設は、正式には動物を展示している公園なので、動物公園なのです。
多摩丘陵の地形を存分に生かした高低差のある園内は、ひとつひとつの展示スペースも大きく、全体としてかなり広い場所です。
動物たちの暮らしている野生の地域ごとにゾーンが設けられており、それらは歩道で繋がっているのですが、広くて高低差があるために、子どもと一緒に歩くのは結構大変なのです。親の気持ちになると、疲れたー、を連発していた僕は恥ずかしくなります(笑)
しかし、それを補って余りある良さは、生きている動物たちが“目の前”にいること。子どもたちが写真の中で知っている動物が動き、食べ、寝ているのを見たり、臭いを感じたりすることが、不思議と楽しさのようなものを感じさせるのです。
今まで車で向かっていた動物園に、今回は電車で向かいました。
電車を乗り継いで、車とは違う景色を見ながら動物園に向かう道のり、僕が子どもの頃、同じような順路で動物園に行ったことを思い出しました。コアラの電車は、いまでは色々な動物が描かれた車両になっていて、子どもたちの好きな動物って、確かに可愛いだけじゃないよね、なんて思いました。
広すぎる園内、来る時にはいつも全部は見られないことがわかっているので、見たい動物を中心にプランを立てます。今回はレッサーパンダとコアラという2大カワイイを是非観たいということから、どちらも入口とは反対側(つまり、とても遠い)にある展示場所まで、歩いて移動しました。
秋は、夏と違って日差しもやや緩み、何より丘陵を吹く風が気持ちよく感じられます。お弁当の時間も、眩しさや暑さに顔をしかめながら食べることなく、穏やかでした。考えてみると、あまり秋に来たことがない場所でした。
初めて子どもと来たのは、真冬の2月でした。そして、大抵来るのは天気の良い夏場が多いことに気がつきました。そうなると、暑さに気をつけていても体力は削られるので、多くの動物を見るために時間を割けないのでした。
今回、涼しかったこともあって、普段よりも多くの動物を見たような気がします。しかも、涼しいことで動物たちが比較的動いてくれたことも、子どもたちは喜んでいました。
レッサーパンダは相変わらず可愛いのですが、その近くのユキヒョウもウロウロと動きまわっていたり、室内のコアラも木の上をノロノロと動いていて、そのガラスの前だけ人だかりができていました。
少し前までベビーカーで回っていた真ん中の子も、坂道を楽しんだり動物たちを食い入るように見つめたりと、思いがけず元気でした。帰り道「もっと見たかった」と子どもたちがお決まりのセリフを言うのも、体力がついたんだなぁなんて感心してしまうのです。
秋は行楽シーズンですが、動物園のような身近な場所もまた秋が楽しいことを改めて知った1日でした。秋とはいえ暖かな日だったので、アイスを食べて元気を出して帰るのは、夏と変わらない僕たち家族の習慣のようになっています。