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ちょっと早足で行く。
僕は、通勤経路の三分の一を徒歩が占めている。およそ1時間の通勤時間の中で、ほぼ20分が徒歩の時間になる。
その20分は駅から職場までの道程である。駅を出て、信号をいくつか待つ以外は、歩き続ける。ちょっと早足で行く。
春の頃は、早足を意識するとか、どこかに近道はないかと探していたけれど、いま道は決まった。早足でいなくちゃという意識はなくなりつつある。
改札を出て、駅から続くモールの通路を渡り、階段を降りる。階段の縁の凹凸を足の裏(指の付け根あたり)で感じながら。目の前の信号が変わらないようにと祈るのも忘れていない。
その勢いのままに、一つ目の信号を渡る。その時に、足が回るような感覚になる。それが、僕にとってのスイッチが入った瞬間かもしれない。
昔から、足音をさせないように歩くことを心がけていたので、あまり音はしない。なるべく前の人を追い抜きたい気持ちもあって、人がいれば、反対側から歩いてくる人や走ってくる自転車を見極めて、追い抜かす。
追い抜こうと決めて、さらに足を早く動かすと、途端に視線は虚空を彷徨う。抜かす人を見ないように、さも自然な歩みであるかのような表情を装って、少しずつ距離を縮めて、横にずれて、身体がぶつからないように前へ出る。
追い抜いた後、また自然を装って歩く列に戻り、ちょっと息を吐く。
信号はきちんと待つ。
抜かした人が、横断歩道で追いついたり、信号が変わってスッと追い抜かされたりするけれど、それはそれ、と考えられる。
信号が変わって歩き始める時は、右足からだ。すぐ早足に戻れる。
日傘を差すのは、駅前の通りを抜けて幹線道路との交差点だ。多くの人がいるけれど、日傘を差すとなんとなく視線が逸れるのが分かる。
集団で歩いていても、道を進むに連れて、ひとり曲がり、ふたり曲がり、だんだんとバラけてきて、自分の歩く道が変わり、やがてひとりで歩いていく。
家々の間を歩きながら、朝の声を聞く。
小さな子どもたちのはしゃぐ声、大人の挨拶、掃除するほうきの音、ゴミ袋を置く音、自転車を漕ぐ音、たまにある車が横を通る音。
バス停にバスが停まる音を聞きながら、最後の信号を渡ると、コンビニの前を通る。店に入ると、独特のメロディーが流れる青と緑の看板のお店。
ペットボトルが並ぶガラス戸を開け、商品を取り出して戸を持っていた手を放す、バタンと戸が締まる。
小銭の音がしない会計を済ませて、布の袋にペットボトルを入れて、また歩き出す。
朝から公園で遊ぶ子どもたちの声。職場が近づき、カシャンと日傘を畳んで、ガチャリとドアを引く。
「おはようございまーす」
ニャークスのヤマダさんの企画、#文字でスケッチ に参加した投稿でやんす。
語尾が乱れたのは、この企画への参加表明時のコメントに寄せたためだ。夜中に書いていたからではなく。
ちょっと趣旨が違ったかもだけれど、練習練習。音を書くか、迷った。
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