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春色の姉妹 #書もつ

淡いピンクのドレスに身を包み、ダバダバダバダバ・・と、トルコ行進曲を歌う姉妹・・・の“真似をする姉妹”を初めて観たのはいつだったか。

芸人と呼ばれる人たちの中でも、その風格というか庶民的な見た目というか、なんだか妙に存在感のある、中年女性のコンビ「阿佐ヶ谷姉妹」。今さらだけれど、おふたりは本当の姉妹ではなくて、ただの仲良し女子だ。

仲が良いから、六畳一間に同居している。

そんなドラマのような設定が現実にあるの?と読み手が引き込まれたら最後、堪えきれない笑いと、しんみりする人生考と、含蓄のあるような、ないような話に、ブンブン振り回される。

のほほんふたり暮らし
阿佐ヶ谷姉妹

中年のおばさん、なのだけれど、時代に乗っている芸人さんでもある、そんな不思議な組み合わせで活躍されていて、エッセイも書いてしまうなんて。しかも同じ釜の飯どころか、同じ部屋のこたつで、お互いにエッセイをしたためているらしい。

濃い。濃すぎる。

仕事も生活も一緒だなんて、いくら仲良しだからって、いくら女性同士だからって、いくら阿佐ヶ谷が暮らしやすい土地柄だからって、やっぱり信じられない。

六畳一間で、どうやって暮らしているのか、それはすぐに書いてあった。こたつを中心にして、それぞれのテリトリーがあるらしい。そこに布団を敷いて、寝ている。シンプルな暮らしだ。

作中では、その部屋の様子や、部屋でロケをしたことなども書かれているのだけれど、肝心の映像を見たことがないので、想像するしかない。しかし、油断すると声を出して笑ってしまうくらい、面白いのだ。

だんだんと二人の暮らしも手狭に感じられるようになり、引越し先を探したり、奇跡が起こったりして、やはりこの姉妹は何か持っているのだと思う。

作中には、エッセイとは別に小説が2篇収められている。

阿佐ヶ谷を舞台にしたちょっとファンタジックなお仕事小説と、温泉地を舞台にした人情もの。どちらの物語も、登場するキャラクターがとても人間味があり、じんわりとする温かいものだった。

才能は、外に出さなければ誰にも分からないものかもしれない。それは本人だって才能だなんて気がついていないのかも知れない。

失礼ながら、めちゃくちゃ面白くて、大笑いして元気になるような、そんな力強さはないけれど、人生を重ねてきた落ち着きに、(万が一)面白くなくても生きてりゃいいじゃん、みたいな納得感を感じてしまうのだ。

この作品は、読んだのではなく聴いた。

Audibleを始めて、いつの間にか数ヶ月が経っている。先日紹介した自衛隊の中の人エッセイもそうだったけれど、エッセイを聴くのも筆者から話を聞いているようで楽しい。阿佐ヶ谷姉妹の本人たちが読んでくれたらもっと良かったけども(笑)


姉妹は、2人でさまざまなことを実現させてきた。それがエッセイになり、読み手を笑わせて励ましてくれる。仲は良いけれど、お互いにモヤモヤする部分もあって、どうもムカついてしまう場面もあると書いてあった。

そりゃそうだ。

そうでなければ、あんなに他人を思いやったネタはできないだろうし、お二人には全く覚えがないだろうけれど、テレビなどで見かける若手芸人を見つめるあの眼差しは母の眼差しである。

これからもお二人の活躍を祈りつつ、阿佐ヶ谷の街に思いを馳せたい。


彼女たちのアイデンティティのようなメガネが春色に包まれたサムネイル、infocusさんありがとうございます!あの2人の、ホホホという笑い声が聞こえてくるようです。

#エッセイを読む #阿佐ヶ谷姉妹 #推薦図書 #姉妹 #私のイチオシ


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