パラソル記念日
あの投稿をしてから、はや11日が経ちました。
いろいろな方に読んでもらい、コメントをもらって、軽々と傘を買い、本格的な夏を待つことなく、すぐに日傘デビューを果たしました。その節は、ありがとうございました。
日傘を英語にしたら、パラソルとのこと。あの有名な詩に肖って「パラソル記念日」、さっそく迎えることができました。
控えめに言って、日傘、持つべきですね。
日傘デビュー、その数日間の様子を書きました。
初日:衣替え
衣替えに合わせて、日傘を使い始めようと思い立ち出発。しかし、電車を降りてから、駅を出て、傘を開くことに躊躇いがあり葛藤するも、まずは差すことが大事と、人が少ない通りで開くことにした。
通勤経路は、やや人通りの多い駅前通りを5分ほど歩いてから、幹線道路を渡って、大きく曲がって住宅街へ入っていく。その住宅街に入ったところで、開くのだ。
すれ違う人もいるし、後ろで歩く足音もする。少しの視線は感じられるが、すれ違う人に、傘が邪魔に感じられないような広さも必要なのだと気がつく。
電車を降りてから、知らず知らずのうちに周囲の景色の中に、日傘を探している自分がいて、さらに見つかる日傘の持ち主は、全て女性のようだ。つまり、男性の日傘なんていない。
そのことを、やはり・・と感じながらも、すれ違う男性は、一様に「あちい」というやや歪んだ表情をしているようにも見えた。
意を決して、傘を開いた。
雨でもないのに・・真夏でもないのに・・と思っていたけれど、日陰に入ったような快適さが顔を覆った。
日陰に入ると「あ、涼しい」と感じた瞬間が、一気に引き伸ばされたような、ずーっと日陰を歩き続けているような感覚が心地よい。
日陰と日向を出たり入ったりしていたら、いちいち体感する。すずし、あつっ、すずし、あつっ。
それがないのだ。
ずっと日陰。
そして、日差しは表情を歪める原因にもなっていたのだと気がついた。眩しくないから目をひそめなくてもいい。
それそこそ、ずっと涼しい顔でいられる。
2日目:見られる
次の日も晴れた。日差しは前日よりも緩いけれど、しっかり日陰と日向の温度差もあるし、眩しさもあった。
また曲がり角で傘を開く。昨日はずっとカバンに入れていた傘は、駅を出てからずっと手にしていた。雨でもないのに、折り畳み傘なのに、手で持って歩いていた。
日傘を差すことで、どれだけ快適か分かっているから、早く開きたくなっていた。
でも、昨日感じたすれ違いのスペースの狭さや、人の数を考えたら、人通りの多いところは、あえて差さなくても良いと思った。
日傘を使うことは、実は自分だけで終わらせたくない思いがある。
それは、男性育休のことも同じように思ったけれど、単純に“幸せ”だからだ。この幸せ、という言葉は、“楽”でも“豊か”でもいい。
装いは、その人の主張であると同時に御守りでもある。あまりファッションの知識もなく、興味もさして強くないけれど、服を着ることはそういうことかもという仮説が僕にはある。
男性が日傘を使うのは、どう捉えられるだろうか。
言葉を選ばずに言えば、女性化と考える人もいるだろう。健康志向とも言われそうだ。目立ちたがりという人もいるだろう。なんなら、もやしっ子なんて呼ばれたりして。
日傘を差すときの目標がいくつかあって「職場の人に目撃される」というのがある。僕と目が合わなくてもいいし、出会い頭で驚かれるのでもいいけれど、僕が日傘を差して歩いているところを見てほしい。
初日は分からないが、この日は明らかに僕を見た同僚がいた。信号待ちをしていた僕を、チラッと見たはずだ。
目標には続きがあって、職場で「日傘ってどう?」と聞かれたいのだが、それはまた今度。
3日目:晴雨兼用
仕事を休んで、子の授業参観に行った日。
お昼に強めの雨に遭う。この時期特有のザーザー振り。そんな中、子どもの学校に迎えに行くことになり、靴をビショビショにしながら学校へ。
授業参観の後、少し出かけてからの迎えだったので、鞄には日傘しかなかったけれど、晴雨兼用の傘だった。無事に役目を果たして学校に着いたけれど、足元は最悪。
誰もいない学校の玄関でスマホを見ると、学校からのメールが届いていて。
「雷雨が強いので、下校時間を遅らせます」
もっと早く確認すればよかった。
いちばん雨の強い時間に出てきて、ビショビショの保護者、僕だけ(笑)
4日目:見つけた
駅から職場まで歩いていたら、なんと日傘男子を発見。休日出勤も悪くない(笑)
遠くから見ていたので、どんな人が差していたのか分からないけれど、なんとなく若者。足早に駅に向かい、その視線は伏し目がちだった。
同志のような気分だったけれど、狭い歩道で傘を開くのは晴れでも、雨の日も、なかなか大変。と考え直して、いつもの曲がり角で開くことにした。
日傘を差していると、こちらをじっと見る人はいないけれど、なんとなく目を逸らされている感じもして、ちょっと不安。とはいえ、奇異なものということでもないのかなぁなんて思いながら、こちらも目を逸らしながら歩いている。
その日の夜、妻と会話していたら驚くべきことを言われた。
「もっとおしゃれな日傘、買えばいいのに」
なるほど、その視点はなかった。
というか妻からしたら、僕が日傘を差すことなんて驚かないし、むしろもっと早くやればよかったのに、なんて思われていたのだ。
ということで、日傘デビューはつつがなく、そしてまた新たな展開が見えてきた、梅雨入りなのでした。