あなたの心、透きとおっていますか? #書もつ
先週ここで紹介した、あさのあつこの著作を書店で見つけたとき、近くの棚に、このタイトルを見かけた。読書家のnoterのみなさんが紹介していた作品だと思い出し、手に取る。
知らない作家だけれど、一体どういうことなのか、帯にある言葉に違和感を覚えながらも、その真相が知りたくなった。
あさのあつこは、透きとおった風だった。
こちらは、透きとおった“物語”らしい。
奇しくも「透きとおった」がタイトルに含まれている作品を続けて読めることになった。
果たして、どんな物語なのだろう。
世界でいちばん透きとおった物語
杉井 光
高名な作家で人格者だった亡き父の遺稿を探す息子の成長を描く、家族愛に満ちた温かな物語…ではなかった。
少年が出会った、肌が透き通るように美しい謎の女性は、文芸編集者だった…!…勘違いから紡がれる現代版の純愛物語…でもなかった。
大喜利を続けても飽きられてしまうので、本編に戻ろう。この感想文も”読みながら書けば良かった”と、いま後悔している。真相が知りたくなって、ページを繰るたびに、ひとつひとつのピースがはまっていくような感覚があった。読み終わって書くと、読書体験という言葉で表現することも自信がなくなるような、どうしても違う気がするのだ。
物語の世界に浸っていたら、それとは気づけなかったのに。
読んだことがある方には、もはや説明無用だが、この作品の肝はタイトルであり、主人公である。なによりも、これはミステリーであることを強調したい。
母が他界し、ひとりの世界で生きていた主人公の人生に、不意に兄が登場する。きっかけは高名なミステリー作家の死だった。主人公は、作家の不倫の末に生まれた“隠し子”のような存在だった。
兄とは言え、主人公とは相容れない。信用ならない言動で主人公を振り回し、厄介ごとを押し付ける。そのくせ、お金が絡むと粘着質。
物語の中で、ずっと追いかけていくのが、死んだ作家が書いたとされた遺稿であり、その遺稿のタイトルが「世界でいちばん透きとおった物語」なのだった。
読み手ならずも、遺稿は見つかるのか、どんなことが書かれているのか、作家の残した思い出話「殺人未遂事件」の真相も気になって、いつのまにか主人公と行動を共にしていた。
内容の割に、言葉遣いがとても優しく、分かりやすい。それだけではない、ある感覚に気がついたとき、僕は鳥肌がたった。読んでいた場所で、うわー!!と声が出てしまいそうになった。
紙の本、万歳!
この作品を紹介している人は、一様に「書けない」と書いてあった。何かを書けば、ネタバレしそうなのだ。そのくらい派手なのに、読み手は気がつか…果たして、あなたはどうだろうか。
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