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ひとり温泉

久しぶりの家族旅行へ。車でスイっと行けて、なんとなく土地勘もある、いつもの山梨県の温泉地へ行ってきました。長い距離を運転するのはちょっと・・という僕でも、だいぶ慣れてきました。道が空いていれば1時間半ほどで到着する、そんな場所です。

子どもの夏休みも終盤・・たまたま、大きな宿の空室があり、安く泊まることができるプランで予約していました。予約サイトにあった写真は、部屋も広々として、温泉地らしく大浴場も広々としていました。

到着して、晩御飯を食べてから、家族バラバラで大浴場へ。

僕は赤ちゃんと部屋で留守番し、ほかの家族が帰ってきたら、交代に入ることにしていました。広いお風呂で楽しんで帰ってきた家族たち、表情もほくほくで良かった・・僕は、ひとりで男湯へと向かいました。

時刻は夜の9時すぎ・・ちょうど人が切れるタイミングだったのか、入る時には脱衣所に3人ほど先客がいました。みんな浴衣を羽織って、お風呂をあとにする様子。

大浴場への扉を開けると、広々とした空間には誰もいませんでした。やったね、なんて思って体を洗い始めると、人影が・・従業員であるおばちゃんが椅子や洗面器の整理のために入ってきたのでした。

正直、僕はそういう状況は好きではありません。女湯におじさん入って来ないでしょ・・って思うわけです。せっかくのひとり温泉に水を差されたような気分に。おばちゃんが出て行くまで、ずっとシャンプーしているフリをしていました。

僕たち家族の泊まっているフロアはどのドアにも名札が貼ってあって、かなり宿泊客はいたはず・・時間帯も遅くないから、誰かお客さんも来るかな・・なんて思っていましたが、湯船に入って少しだけぼんやり・・しても、ひとり。

露天風呂に移動して、綺麗な月を見ながらお湯に浸かっていても、ひとり。

サウナもあり、誰もいないことを確認しましたが、今回は時間の都合もあり、やめました。

序盤におばちゃんの登場があったものの、おばちゃんが去ってからは20分程度、ひとり温泉を満喫しました。いやー良かった(笑)

かつて、ひとり旅で泊まった宿で、客がほんとうに僕ひとりだった記憶も思い出しつつ、静かで穏やかな時間を過ごしました。

思えば、ひとりで温泉なんていつ以来でしょうか。真夏の温泉は沁みる感覚は少ないものの、熱いお湯と湯気に包まれて、のんびりとした気分になれるのは至福の時でした。♪〜いい湯だな・・ハハハン・・みたいな(笑)


久しぶりの温泉を満喫して、脱衣所に戻りました。

脱衣所には、壁に沿ってカゴが並んだロッカーがありましたが、僕の使っていたカゴの2つ隣のカゴにも、誰かが着ていたであろう”浴衣”が入っているのに気が付きました。あれ?浴衣・・入るときには置いてなかったはず・・。

なにより妙だったのは、浴衣を着ていたであろう”客の姿”が、ないのです。

いくら酔っていても浴衣を着忘れて帰る客などいないでしょうし、パジャマに着替えた子どもが着ていた浴衣でもありませんでした。鏡のあるスペースを見ても、誰もいませんでした。

やや気味悪い気分になり、あまり気にしないようにと、髪を拭き始めました。

すると、なんとなく横からの気配を感じ・・・おそるおそる視線を飛ばすと、そこには業務用の大きな扇風機が首を振っていました。

洗っているときにも、湯船にいるときにも、誰も入ってきていないし、露天風呂も奥まで歩いてからお湯に浸かりました。露天風呂の出入り口は一つでしたし、客らしき人の姿を見ていなかったのです。

え、どういうこと?いないのに、浴衣だけ?

みるみる怖くなってきて、一刻も早く部屋に帰りたくなってきました。誰もいなかったはずの大浴場に、姿の見えない誰かがいるかも知れないと思うと、気が気ではありません。

髪を乾かすために鏡の前に立って、背後に何か写りでもしたら、旅行どころではありません。鏡にも近付きませんでした。

慌てて浴衣を羽織り、急いで帯を結んで・・・忘れ物をしないように、目でカゴの中を確認しながら・・。


ガチャリ。


脱衣所の片隅にあったトイレから、おじさんが登場しました。




色のない脱衣所に、ひときわ目立つ浴衣・・・infocusさん、サムネイルありがとうございます!まさかね、と思ってから、どんどんふくらむ怖い妄想に、我ながらビビリだなぁと思った夜でした。



#おったんかい #ホラー #ひとり #温泉 #大浴場 #妄想

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