【博物館】国立民族学博物館 三回目【最終回】
2024年7月16日
尼崎に出張があてがわれたので、これまた幸いと前日入りの日を休みにして今年三回目の国立民族学博物館に向かう。
一般的に考えると同じ博物館なぜ三回も?というのではあるが、自分の博物館周遊のスピードでは初回のときに1/3がせいぜいであったので、同じ年度中に1周、まわれればいいな~と思っていた。
この度無事、達成。
前回は、東南アジアと南アジア(インド周辺)と、ユーラシア大陸を渡ってきたが、最後は朝鮮半島、中央、北アジア、そして日本へと連なっていく展示であった。
まず朝鮮半島といい思い浮かべるのは、儒教文化の国ということが思い起こされるが、やはり宗教の紹介からして儒教、仏教といった陸路で広まってきたそれらが歴史上は多く広まっている。という予想の通りの展示を見ることが出来た。
しかしここは民族学博物館ですので現代を含めた視座でみると、実はキリスト教の国でもあるらしい。その数なんと国民の1/4の割合でキリスト教徒らしい。
お隣の国であったのだが、意外にもそのような民族性については何も知らない……。というかアメリカの影響めちゃめちゃ受けている社会構造にびっくり。
日本とは海一枚隔てた国として、かなりの日本文化の流入、逆に日本への韓流ブームによる作品の流入なども示していて、やはり今を生きる民族にフォーカスするとこうなるよね~(笑)と思ってしまうような展示だった。
また朝鮮半島を語るうえでは欠かせない、キムチの歴史をたどり、過去どのような作り方が伝統的にされてきたのか。またそれが現代ナイズされ白物家電として韓国の各御家庭のキッチンにキムチ専用冷蔵庫として入り込むか。までも辿れるような作りになっていたのは笑ってしまった。
また、日本統治下の農業改革、日本風洋食の流入と現地での流行などもあってかなり身近に感じ取れるような文化面の展示はつくられていた。
それでも歴史上の代表的な文化面もあらかた取り揃え、アジア圏共通に見られる神々への意識の向け方なども一部見て取れたので、やはりシルクロードなどを通じて見て取れる文化の変遷は面白い。
そして続いては東アジアの雄としての中国全土の展示。
漢族を代表として多民族国家である中国のコーナーだが、あまりにも民族の数が多すぎるので、民族を絞りピックアップし、紹介されていた。
また文化というくくりでいいのだろうかと思うのだが、中国の文革につらなる文化のあり方といった様相で展示されているプロパガンダなども多くあり、近代をこえて現代にたどり着いている中国では切っても切り離せない呪いなのだろうかと思ってしまった。
とはいえ、世界最強国だった中国という土地にある国って歴史上での割合として長いし、直近200年がクソ雑魚だっただけなわけでありまして。という気分になってしまった。
そう思うと民族学というくくりで物を考えるためには国というくくりの制限で区分けするのではやや狭すぎるのかもしれない。
とくに身近であるこの日本という国が如何に世界標準に照らし合わせると異質な国体形成をしているのかということも思いついた。
しかしやはり中華人民の多さ、という点で諸外国に中華街を形成するという文化もきっちり紹介されていた。
確かに日本にも中華街あるな。そして欧米各国や、東南アジア圏も当然のように華僑の街がある。
多数の人間というソフトパワーで文化を広げていくのは確かにこれも民族性。と言えるのではなかろうか。
そういった人口という巨大なパワーが見て取れるような展示の数々だった。
そして中国を抜けると日本、ではなくユーラシア大陸最後のエリア、中央、北アジアの国々の文化圏の展示になる。
とにかく寒い地域、そして標高も高い場所も多く、人が棲むにはかなり過酷な地域ではあるが、先人たちはいろいろな耐寒具で人類の住む場所を押し広げてきたかがわかるような展示の数々。
まず毛皮でもっこもこの衣類がとにかく多い!
そして、やはりというか農耕は出来ないので高度な放牧文化、そして古来から伝わる狩猟文化を利用している様子が目立つ。
モンゴルに関してはこの放牧文化のお陰で『郵便の住所』というものが非常に特殊で遊牧される土地でもマス毎にアドレスが設定してあって、遊牧していても郵便が届くらしい(私書箱使わないのか……)。
狩猟文化の側面の部分では、狩猟の練習のための毛皮や、財としての毛皮など衣類にとどまらない毛皮の使い方をしていた様子がわかった。
また極北の文化(?)として社会主義についても触れられ、ソビエト連邦時代の物品なども置かれていた。
社会主義共産主義、アカは民族性・・・?w
そして最後はサハリンの文様文化に触れつつアイヌの文化へと切り替わっていく。
特にこのサハリンの文化とアイヌの樺太、北海道、千島列島の文化は非常に似通っていたのでうなづけるような置き方であった。
樺太、千島列島、そして北海道、また日本本土の東北アイヌというところまで紹介され、展示のメインは北海道アイヌの方がこの日本という国の中でどのように江戸~現代までの間日本人と接してきたか、また伝わる郷土文化をどのように保存していくかということが主眼であった。
特にアイヌの文化保存ということがメインだったので、熊の木彫りや、昨今注目を集める家ごとの文様をあしらった品など、現代で活躍されている方々の作品も多々置いてあった。
しかしまぁ漫画の力とは凄いもんで、うわ!これ金カムでみた!ってものが様々。特に呪術的な習わしなどについては確かにこのまんま漫画になってるwと思えるほど。
またアイヌ家屋の再現などもすっげーーー!って思える出来であった。
そしてアイヌの文化圏から南下し、ようやく日本の民族展示へ。
長かった。ここまで来るのに非常に長かった。
世界の民族を周回したあとの最後に置かれる我が国の文化というだけでややの安心感さえある。
という感慨はさておき、日本の代表的な文化。そう、祭りですね。様々な宗教観、神仏習合上等、日本神話からの神々上等、などなど言い方はちょっとアレだが雑多な神様を祀るために日本人はどのような事をしてきたのか。ということに焦点を当てて日本の展示はスタートする。
神社の例大祭に使用する御幣、注連縄、お寺の頂幡や祭りで使うお面の数々、日本各地には様々な神性を祀る無数の手段があるのだなぁと圧倒される。
そしてそれらと切っても切れないのが、それらの祭りを目的とした民衆の移動。観光である。
日本人ってホントお祭り好きよねぇ。という実感というか身から出た錆を眺める気分というか。
そしてここで衝撃的な事実が判明する。
え!?そう読むの!?!?って一番ビックリしてしまったかもしれん。
どれ、変換。って思って今パソコン叩いてるけど「しんよ」で神輿出るじゃん……。
これに気づいてなかった日本人、俺だけかもしれん。
という閑話休題でした。
昔から残っているお祭りは当然として、各地の新しいお祭りや、特産品を使用したお祭りのバージョンアップなども展示されていたので変化する文化としての展示の意味合いもかなり強い。
お祭りのエリアを抜けると今度は日本の産業のお話へ。
稲作である。稲作に関してもお祭りや神様とのつながりは切れるどころか強まるばかり。
ここでは九州地方に特有な田んぼの神様についての展示が入念な過去の調査と共に展示されていた。
続いては漁業についての変遷が語られるコーナーだったけどあんまりここについては社会科のお勉強~って感じで、ここまで世界中の漁法などを見てきた身からするとちょっとパンチが弱いか?って思ったけど、日本独自のものありますよ。ぜひとも見てくれ。
そう、大漁旗。である。確かに他の海洋国家でもみなかったな!?って具合で鮮やかな着色の大漁旗が並ぶ。
ていうか使用していた本物かいw
日本というエリアで区切ると全体的な比較文化はなかなかにできそうにもないうえ収集がつかなくなりそうなので、特定のモノにスポットライトを当てた展示が日本のエリアでは続く。
こけしの地域性といった研究も確かに日本の民族学博物館ならではという感じがして非常に好きな展示だった。
そして最後は第二次世界大戦、太平洋戦争を経験したあとに文化の転換が迫られた沖縄という日本に置いては特殊な土地の紹介もされていた。
その文化の転換よりも前から日本よりも更に海洋国家として発展していた琉球についても少々語られていた。
最後は多民族が国内に居住している現状を踏まえたうえで、文化とは、民族とは。という事を観覧者に投げかけて展示は終わる。
国立系の博物館ということで、初回から観覧時間をバッチバチに警戒して向かっていたこの民族学博物館。
その名前に違わぬように一回りで地球1周分の地球人を知ることができて非常に楽しかった。
このような膨大な展示のときに思うのだが1日が24時間では足りない。ということがある。
この地球1周の醍醐味を一番良く浴びるためには連続して見ることが肝要だなと感じた。
グラデーションのように少しずつ変化していく宗教、その土地ならではの技術、そして社会の発展の仕方の相違など、文化社会を見つめる視点は無限大だけど、コト、モノ、ヒトに視点を絞って読み取る楽しさを味わえた博物館だった。
以上。