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映画感想#01✿北極百貨店のコンシェルジュさん※ネタバレ注意
先日、読書記録を始めた。
しっかりと内容を書こうと決めて、読んでいるとしっかりと頭に入ってくるようになった。
同じように、映画も心に残ったことを書き留めれば、記憶に留まる、もしくは読み返した時にその時のことを思い出していいのではないだろうか。
そう思い、映画感想も書くことにした。
はじめに
「北極百貨店のコンシェルジュさん」
本作の主人公は、秋乃という人間の女性だ。
コンシェルジュに憧れ、夢を叶えた彼女が勤めるのは、北極百貨店。
その百貨店を訪れるのは、様々な動物たち。
その動物たちも、各々が抱えている悩み、問題があった。
映画本編では、そんな彼女が一人前のコンシェルジュになるため、訪れたお客様と接し、時に笑い、時に落ち込み、奮闘していく姿が描かれている。
映画の一番最初、秋乃と思われる少女が北極百貨店で無邪気に走る姿が映し出される。
無邪気が故、動物たちにぶつかりそうになってしまう。
くるりくるりと避けた先、転んでしまう直前、彼女は受け止められる。
見上げた先には、微笑む女性。
それが、彼女がコンシェルジュに憧れるきっかけとなったのだった。
秋乃の回想シーンということもあるのだろうか、絵本のようなタッチで描かれている。
きっかけとなった想い出は、今もきらきらとしているのだろう。
それが伝わり、此処から先の彼女がその憧れの世界で息をするのだと、わくわくしたのだ。
目の前に居るお客様が、何に困っているのかを汲み取って行動する彼女は、真っすぐで、時々危なっかしいが、人を惹きつける魅力を持っている。
きっと、私が彼女の傍に居る友人だとしたら、友人として彼女を助けたくなってしまうだろう。
此処からは序盤以降のネタバレを含むので、ネタバレが苦手な方は、是非一度、映画を視聴してから読み進めていただきたい。
映画本編の感想※ネタバレ有
秋乃の成長
秋乃は周囲の人々、動物たちの言葉を真摯に受け止め、成長していく。
最初は「目を見れば分かる」という言葉から、「何で困っているのか」「何を求めているのか」を注意深く観察するようになった。
中盤で「コンシェルジュに"No"の文字はなし!」という言葉を吸収した。
2つ、無茶な約束をしてしまうが、なんとか約束を果すことが出来た。
但し、吸収した結果、とんでもないことが起きてしまうのだが…。
とんでもないことが起こった結果、彼女は酷く落ち込んでしまう。
いつでも、お客様の目を見て、声を掛けていた彼女が掛けれずに躊躇してしまう場面が辛かった。
それでも、彼女はどうにか前を向いて、諦めずにその場に立ち続ける。
一人のコンシェルジュとして。
目の前のお客様と向き合い続けるために。
「分かりません、でも…残ります」
魅力的なお客様
北極百貨店に訪れるお客様は、どの方も個性派揃いだ。
特にニホンオオカミのカップルの場面で、胸が締め付けられた。
プロポーズをするためにレストランを訪れる場面。
フィンガーボール
この単語を見て、思い当たる節が皆様にもあるのではないだろうか。
あれを彼氏さんが飲んでしまうのだ。
彼女さんはそれを見て、ハッとする。
周囲のお客様はクスクスと笑っている。
彼女さんはフィンガーボールの正しい使い方を彼氏さんに教えるのではなく、同じようにそれに口を付けた。
正しいことがいつも、正解ではないのだ。
正しくないことこそ、相手を思いやって行動することが、正解となり得る時もある。
正しくあろうとすると、何をしたかったのが分からなくなってしまうのだ。
目の前の人の笑顔を見たかったはずなのに、目的がすり替わってしまったら、それはとても…悲しいではないか。
どのお客様のエピソードも好きなので、是非映画をもう一度見てほしい。
一筋縄ではいかない世界観
V.I.A(絶滅危惧種)
マンモスのウーリーさんの永久凍土にあるアトリエが溶け出す―。
作中では、登場する動物たちが絶滅危惧種であり、その絶滅危惧種への罪滅ぼしとして人間のコンシェルジュがおもてなしを行うと説明があった。
最初はのほほんとした世界観だと思ったが、どうやら一筋縄ではいかないようだ。
秋乃は北極百貨店のオーナーであるエルルがオオウミガラスであることを知らなかった。(ペンギンと言っていた)
V.I.Aという言葉も知らなかった。
きっと、北極百貨店が作られた理由、コンシェルジュが人間である理由も知らないのだろう。
もしかしたら、実際に働いている人間は知らなくて、経営層に近い人間のみが知っているのかもしれない。
しかし、知らないからこそ一人の人間として、どの動物のお客様に対しても平等に接することが出来たのだろう。
知ってしまったら、憧れの場所が、罪滅ぼしの場であるとしたら。
秋乃は、立ち続けていられただろうか?
エルルは、これからの時代、北極百貨店がどのような場所になっていくか、それを気にしていた。
しかし、秋乃と出逢い、「人間が絶滅危惧種のために罪滅ぼしを行う場所」ではなく、「お客様一人一人が笑顔になる場所」が見えたのだろう。
だから、それを彼女にも見せたくて、飛べないのに、飛んでみせたのだ。
gift
”誰かが喜んでくれることがうれしい”
そんなコンシェルジュ精神は誰もが持つことができる。
この物語は、自分以外の誰かに対して、喜んでもらいたいという気持ちで動いているキャラクターたちにフォーカスしている。
自分のために、と行動しているのはカリブモンクアザラシの時くらいだろうか?
誰かから贈られたことがある人は、誰かに贈り返したくなるのかもしれない。
直接的な物品ではなく、思いや言葉を渡すこともあるのだろう。
転びそうになった自分を受け止めてくれたコンシェルジュに憧れた秋乃は、誰かを支えられる人間へと成長した。
香水を探しに来たバーバリライオンは、様々なお客様とコンシェルジュの協力で、香水を手に入れることが出来た。
その結果、一緒に訪れた彼女と共に、北極百貨店の素敵なところを探した。ウーリーの作品に憧れたネコは、自分の手でウーリーと最愛の奥様を作り上げ、贈った。
贈ったことによって、相手が本当に喜んでくれるかなんて分からない。
それでも、相手のことを想って、行動に移せることはとても尊いことだと、私は思うのだ。
終わりに
物語の最終盤で気になるシーンがあった。
コンシェルジュの彫刻が飾られている。
他の動物たちと変わらず、同じ大きさで作られていた。
きっと、ウーリーが作ったのだろう。
それが飾られているということは、エルルがもしかしたら、北極百貨店のこれからを、ありたい姿を変えたのかもしれない。
序盤と同じように小さな少女が転びそうになるところを秋乃が受け止める。
北極百貨店に訪れるのは、動物のみだった。
序盤の秋乃は、もしかしたら親族に連れられて、北極百貨店に訪れたのかもしれない。
では、この少女もそうなのだろうか?
それか、もしくは―。
私は人間が絶滅危惧種になったのではなく、人間も動物も変わらず、お互いを思いやって生きていける未来になったのではないかと、希望を持ちたい。
秋乃の成長していく姿、それぞれの登場人物、動物たちの悩みや葛藤、贈られ、贈り返す尊さ。
北極百貨店は、きっとこの世界のどこかで、誰かの笑顔を生み出しているのだろう。
もうすぐクリスマスだ。
貴方は、誰かに何かを贈るのだろうか。
贈られるのだろうか。
その先の笑顔に、出逢えます様に。
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