【読感】近くて遠い子どもの世界
息子が療育を勧められたのは、3歳になる直前のことでした。
保育園の先生から、『昼寝をしない』『お友達を叩く』『みんなで一緒にが難しい』など園での様子を教えられ、療育に通うのはいかがでしょうかと言われました。
今覚えば「いやいやあんたら2歳児にどんだけのこと求めてんの…」とも思うのですが、それまでの生活でなんとなく育てにくさを感じていた私は素直に従うのでした。
「息子はまだこんなに小さいんだから」と自分を宥めようとしても、言いようのない焦りと不安に押し潰されそうになり、息子が寝てからの時間はひたすら検索魔になっていました。
発達障害 僕にはイラつく理由がある! (こころライブラリー) かなしろにゃんこ。
そんな中で出会ったのがこの本でした。
作者のかなしろにゃんこ。さんの息子・リュウ太さんが、発達障害のある自分自身の過去を振り返り、あの時はこういう理由があってこの行動をとったんだよと語るエッセイ漫画。
可愛らしい絵と読みやすい漫画で発達障害が具体的にどんなものであるか垣間見ることができ、東京女子大学教授の前川あさ美先生の解説とアドバイスで障害への理解が深まります。
専門用語や数字が苦手な私にはぴったりでした。
エピソードが具体的すぎる故にかなしろさんとリュウ太さんの当時の苦労がすごく伝わってきて、我が家も近い将来こういう感じになるのかなと震えたりもしましたが、その全てはどうにかこうにか乗り越えられると前向きに捉えることができました。
発達障害と一括りにして問題行動を非難するのは簡単ですが、じゃあ彼はなぜその行動を起こしたのか、本当に全部本人のせいなのか、当事者でなければわからないことが盛り沢山で、ああ…教えてくれてありがとう…書き残してくれてありがとう…の気持ちになりました。
息子は約1年間、月に1度の療育に通い様々な課題に挑戦してきました。
同じ姿勢を保つことも、話を最後まで聞くことも、前より随分とできるようになりました。
発達検査の結果も年齢相応で、苦手だった課題もかなり上達し、まあまた困ったことがあったら連絡くださいという感じで療育は一旦卒業ということになりました。
息子につい色々言ってしまうと「ぐちゃぐちゃー!」と言って癇癪を起したり、なかなか気分の切り替えが出来なかったり、いつでもどこでも自分のペースを貫いてしまったり。
なんだか辛そうだなぁという場面はたくさんありますが、彼の特性を理解し、感性を受け止め、個性を尊重しつつ、お互い成長していけたらいいなと思います。
自分の中から生まれた命、でも自分とは全く違う人間。
一番近くの知らない世界をこれからも大切にしていきたいです。
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