カレーをぶち撒けたら生きることが楽になった

下書き救済note。

2019/02/03

そう言えば、書こうと思って、そのままにしておいたことを、noteを再び書き始めるようになってから気がついた。

面白いもので、その題名を見た瞬間、当時の記憶が、わっと蘇ってきた。

この頃は、まだ仕事をしていて、これからどうやっていこうかと、日々、悩んでいた。悪い方、悪い方へ 思考は傾き、出口のないトンネルの中をさまよっている、そんな感覚。

その思考のまま、仕事が休みの日のことだ。

昨日のカレーの残りを食べようと、昼にキッチンへ降りていった。

冷蔵庫からカレーの入った皿を取り出し、別の皿に盛り付け、レンジの中へ。

くるくるとオレンジの光をまといながら、あたためられるカレー。

チンっと音がなって、レンジの蓋を開ける。

意識的じゃなく、無意識にカレー皿を手に取り、持ち上げようとした。


その瞬間だった。


手から、カレーの入った皿が滑り落ち、くるくると見事な回転をして、床に落ちて、カレーが飛び散った。


あまりの出来事に、数秒間、その場に立ち尽くした。

カレーをぶちまけたのだ。

飛び散って、ぼくの着ているスウェットにつき、髪につき、食器棚に張り付き、床に豪快にひろがった。

いつもなら「最悪だ」と悪態をつき、なんでこんなことになるんだ、と自分で自分を責めるのだが、そのときは違ったのだ。

おかしかった。

面白かった。

ひとりで笑っていた。

こんな光景を側から見たら、さぞ滑稽に映っただろう。

それでも、見事に飛び散ったカレーの惨状を見て、もう笑うしかないと思ったのかもしれない。

笑ったら、楽になった。

いままで、張り詰めていたものが、笑いで、ぽっと口から出ていったような感覚。


まずは着替えにいく。

そして、大掃除の開始だ。

飛び散ったカレーをティッシュやキッチンペーパー、雑巾などで拭き取り、洗剤を吹き付け、拭くことを繰り返す。

そしたら、どうだろう。床もピカピカになった(ように見えていたと思う)

カレーは台無しになったけれど、掃除ができた。

なんかもう、それで良かったのだと、思った。

肩の力がぬけたのかもしれない。真面目すぎるあまりに、仕事のことを深刻に考えすぎていた。人生まで、深刻に考えすぎていた。

いま、振り返ると、良い体験をしたのだと思う。

そんなに力を入れて、あれやこれやと考えすぎても、疲れるだけ。

カレーをぶちまけて、笑って、掃除をして。

バカみたいな体験だったけれど、それくらいで、ちょうどいいのかもしれない。

ネガティヴをネガティヴなままにしないこと。

そこから、見える、気づき、新しい発見がきっとある。

おすすめはしないが(カレーがもったいない)あなたも、何か嫌なことが起こったとき、ふと、ちょっと離れて、じぶんを見てほしい。

いつもなら、嫌なことだけで終わる体験が、別の角度から見たら、何かの気づきや発見が、隠れてるかもしれない。


ここまで、あなたの貴重な時間をつかって読んでくれて、ありがとうございます。

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もとひろ@絵本作家/エッセイスト
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